『中央銀行から見た仮想通貨の可能性とリスク』
『仮想通貨規制に関する論点等のアップデート』
『パネルディスカッション・質疑応答』

平成28年10月仮想通貨ビジネス勉強会の様子

カリキュラム及び概要

  • 中央銀行から見た仮想通貨の可能性とリスク
     日本銀行 決済機構局 FinTechセンター長 岩下 直行氏
  • 仮想通貨規制に関する論点等のアップデート
     アンダーソン・毛利友常法律事務所 弁護士 河合 健氏(特別会員)
  • パネルディスカッション・質疑応答
     岩下 直行氏(日本銀行 決済機構局 FinTechセンター長)
     河合 健氏(特別会員:アンダーソン・毛利友常法律事務所 弁護士)
     奥山 泰全氏(正会員:株式会社マネーパートナーズ 代表取締役)
     田村 信司氏(協力仮想通貨業者会員:Jトラストフィンテック株式会社 法務リスク管理部長)
     モデレータ:畠山 久志氏(当会代表理事:中部学院大学 経営学科長 教授)
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中央銀行から見た仮想通貨の可能性とリスク

講師:日本銀行 決済機構局 FinTechセンター長 岩下 直行氏

これからお話しをするのは私の個人的な見解で、このような分野について私自身は長年色々と研究して考えてきたことがございますので、それを比較的自由にお話をさせて頂くという趣旨でご理解頂きたいと思います。
現在、日本銀行 決済機構局 Fintech センター長をやらせて頂いておりますが、この Fintech センターの重要なテーマの一つが仮想通貨あるいはブロックチェーンというものでございまして、その技術および法律問題、さらにはビジネス上の問題、さらに思想的な問題という少し不思議に聞こえるかもしれませんが、そのようなものが非常に絡み合う面白いテーマだと思っております。
最初に中央銀行が仮想通貨というものにどのように出会い対応をしてきたかということをお話ししたいと思いますが、現在の仮想通貨の始まりはビットコインであるわけです。
ただ、ビットコインを作った人たちのもっと前に、様々な電子マネーを作ろうという努力をしてきた人たちがたくさんいるわけです。

私が理解している中での最初は、1985 年にデビッド・チャウムという暗号学者がクリプトという暗号学会に電子マネーを電子的に作る方法を提案したというのが始めだと思います。
考えてみれば、コンピューターのネットワークが生まれてから、ネットワークの中である種の情報をやり取りすれば、それがお金のように使えるのではないかと考えた人は多くいるはずです。
そういう意味では特別なことでは無いわけですが、デビッド・チャウムが新しかったのは電子的な取引によってお金のやり取りをするようになると、人々のプライバシーが侵害されるのではないかというのを恐れたわけです。
プライバシーを侵害しないようにするために、ある特殊な技術「プライドシグニチャー」と言いますが、ビットコインでも使われているデジタル署名を施すことによりプライバシーを守りましょうという提言をしたわけです。
それから、電子情報通信学会や情報処理学会などのアカデミアの中で、電子マネーや電子現金と言われるものに関する研究が深まって行き、それらのもののいくつかを実際に私どもが研究をしてきたわけでございます。
電子的な価値を表すものの中に、ただそれだけだと誰でも作れるし逆に色々とリスクがあるということで受け入れられないのですが、何か付加価値を付けると受け入れられます。ビットコインの場合、ピアツーピアのネットワークを使って共有するという事を初めてこの種の議論の中で提案をしたわけです・・・

・・・
プライベートなものとしては、SBI ネット銀行様がブロックチェーンに熱心に取り組まれていて、自分たちの勘定系システムをブロックチェーンで作るとどうな
るかという事を誠実に作られて実験をしています。実際にアタックのテストをやられても問題がなかったそうであります。
それから、JPX 様が今年の8 月にワーキングペーパーを出していまして、株を分散型台帳にしましょう、コンソーシアムブロックチェーンにしましょうという事
で、ビットコインはプルーフオブワークで大変なのでマイニングではないものを使いましょうと、信頼できる人の中だけでスルーにしましょうという事で彼らの
選択の下にやりました。しかし、問題は株の取引では株だけで終わらずに、株の代金を回収するわけです。「Delivery Versus Payment(デリバリー・バーサス・
ペイメント)」(DVP)です。
ところが、今の世の中ではDVP ができているのですが、ブロックチェーンではDVPができないのです。東京証券取引所と参加している証券会社だけでブロックチ
ェーンを作っても、そこには決裁の機能を持っていないのです。そうすると、決済機能を持つ銀行が入らないといけないのですが、今のところは考えられていな
いので、どこかの銀行にトークンを作ってもらって、決済機能をブロックチェーンに載せたら良いのではないかと・・・

(全体は正会員・特別会員のみ公開)
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仮想通貨規制に関する論点等のアップデート

講師:アンダーソン・毛利友常法律事務所 弁護士 河合 健氏(特別会員)

簡単に今後の仮想通貨交換業登録に向けたスケジュール感や、残されている大きな論点は何かという、非常に実務的な話をさせて頂きたいと思います。
まず、当局を含めた様々な関係者と話をしている中で、このようなところで一応考えておくのが良いのではないかというスケジュール感を書いています。
法律の公布日が今年の6月3日ですので、6月2日までに施行されれば良いという事なのですが、年度変わりでもありますので、4月1日ぐらいには施行されるというようなイメージで、準備をされるのが良いのではないかと思います。

今、何がペンディングになっているのかというと、法律だけできていますが政省令と事務ガイドラインが未だできていないということです。
政省令として出てくるものとしては、資金決済法の施行令が出てくることはほぼ確実だと思われます。
それから、仮想通貨交換業に関する内閣府令が出てくるでしょう。ここで実質的に、どのような分別管理をしますかという話が書かれてくると思われます。
それから、監督指針に相当するもので、事務ガイドラインが出される可能性が高いと思われます。ですから、実際にはこちらを良く見て頂くという事になるかと思います。
その他、犯収法の改正ともありますので、それに合わせた政省令の改正もあります。このような政省令等が出される時点でパブリックコメントが募集される可能性が極めて高いと思われます。

時期的なのですが、後ろの時期も考えますと12月中に出てくる可能性があるというふうに見ております。11月中に出ればありがたいですが、少し難しいという感触を持っています・・・

・・・
デリバティブには先物やスワップ、オプション等がありますので、全部をひとまとめで論じるというのも難しく、特に皆様のご関心があるのが信用取引や先物取引だと思いますのでそこに絞った話をしますと、金融先物取引法上では有価証券の先物取引は有価証券の売買に該当すると考えられているのが通説で、ほぼ固まっている見解です。
その考え方をそのまま仮想通貨に持ってくると、仮想通貨の先物も仮想通貨の売買に該当するという解釈をするのが自然と思われます。

もちろん法律が違うので、必ずしも同じ解釈になるとは限りませんが、同じところが所管している法律でもあり、そのような見方はかなり素直であると思います。
今のところ、どのように整理をするのか検討をされているところだと思っております・・・

(全体は正会員・特別会員のみ公開)
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パネルディスカッション・質疑応答

(当社理事 畠山)
岩下様からご発言を頂きたいと思いますが、私の方から質問をさせて頂きます。各中央銀行は一つの考え方を示しておりますが、日本銀行の見解は多分センター
長の見解と一致していると思うのですが、正式な見解は何れ出るものでしょうか。

(FinTechセンター長 岩下氏)
日本銀行として何か見解を述べるかどうかという話については、それが日本銀行のイシューになるかどうかという話ですよね。

仮想通貨自体は既に法律が出来ていて存在をしているわけですが、例えば仮想通貨を日本銀行の取引の対象になり得るか、担保されるのかという議論はイシュ
ーになれば公式見解は出ると思います。ただ、仮想通貨一般について日本銀行がどう思うかという話だとすると感想を求めるみたいな話なので、そのような公式見解というのはあまり他の分野についても特に出したことはないので、日本銀行の公式見解という話にはならないという気がします・・・

(当社理事 畠山)
河合様にお尋ねをしたいのですが、業としての解釈で対公衆性というところで不特定多数という事を言われていたが、仮想通貨の要件のところは不特定性だけですよね。そこの整合性はどのような感じで考えたら宜しいですか。

(アンダーソン・毛利友常法律事務所 河合氏)
「不特定の者」という仮想通貨法の定義で、今までの法律では一般的に「不特定多数」を使うのです。「不特定の者」というのは、あまり見たことが無い定義になっています。

結局、立法段階でお考えになられたのは、そこまで多数では使われてないという現実を見て「不特定の者」という事にされたと思うのですが、現実の法解釈においてどのように違うかという話になった時に、あまり実益が無いのではないかと考えています。

現実的に多数の方に使われているのかどうかというところは、事実問題に還元しなくてはいけないので判断基準として使いにくいのです・・・

(当社理事 畠山)
奥山社長の方からは勉強会と党の環境をお話し頂きたいと思うのですが、宜しいでしょうか。

(株式会社マネーパートナーズ 奥山氏)
今日は代表の幸が欠席をしておりますので代わりお話をさせて頂きます。

前回の勉強会の場で、税制改正に対しての要望を取りまとめて働きかけを行いたいという事で皆様のご了承を頂きまして、43社の会員様の総意として増島先生が作成された税制改正要望のペーパーを概ね10人前後の国会議員の先生に対して、個別に相談の方をさせて頂きました。

今年度の税制改正要望の中に仮想通貨における取得時の消費税が非課税になる方向で調整が行われ始めており、金融庁に対しましても少し打診され始めている状況であるところだと聞いております。
当勉強会の組織をどのようにして行くかは次回ないし次々回に代表の幸の方が話すと思います。
一昨日、自民党の友好団体への登録の方を済ませまして、10 月27 日付けで自由民主党の財政金融証券関係団体連合会の方への加盟と、そちらに対しての予算税
制等に関する政策懇親会に当勉強会の名前で税制改正要望の方を提出しておると言うような状況になっております・・・

(当社理事 畠山)
ブロックチェーンの期待と言いましょうか、自分たちでこのようなことをやりたいというような夢というようなものを田村部長の方から少しお話し頂ければと思います。

(Jトラストフィンテック株式会社 田村氏)
私の方からは事業者の立場としてお話をさせて頂きますと2 点ございまして、仮想通貨の全体的な認知度が低いという部分がございまして、この間の日経にも怪しいと思っている人が半分以上を占めているところでございますので、その辺りの認知度を公表させていく事と、デリバティブと現物の両方を取り扱っておりますが、一番問題になると思うのはリクイディティが決定的に少ないことです。
ここがFX との決定的な違いで、FX の場合はカバー先に大きな銀行がおられますが、ビットコインの場合には大きなリクイディティが無いものですから、注文を出すと意図しない価格で値段が付いてしまうというところが日常でございますので、この辺りは個社で解決しようと思っても難しいところではございます。
その辺りのところを業界全体として取り組んで行きたいと思っており、その暁には業界全体が正しく大きく成長して行けるようにと考えております・・・

(全体は正会員・特別会員のみ公開)
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