『電子決済手段(ステーブルコイン)に係る自主規制規則の解説』

2024年11月21日に開催された月例勉強会(ステーブルコイン部会)は2部構成で実施され、当日の様子をレポートする。

第1部 「電子決済手段に係る自主規制規則の解説」では、資金決済法の規律や、暗号資産交換業に関する自主規制規則との差異などを踏まえ、尾登 亮介氏(森・濱田松本法律事務所 シニア・アソシエイト)、市古 裕太氏(TMI総合法律事務所 アソシエイト)が解説を行った。

JVCEA(一般社団法人日本暗号資産等取引業協会)が電子決済手段の認定資金決済事業者協会として、金融庁より認定を受け、ステーブルコインの媒介やトラベルルールといった実務的なルールが議論され、電子決済手段に関連する新たな規定やルールが整備された。この進歩によりステーブルコインの実現が現実味を帯びてきた。

2022年の改正法では、銀行による電子決済手段の発行がJVCEAの管轄外となり、仲介業務は新設された「電子決済手段等取引業者」のライセンスの間に行われる仕組みが導入された。資金移動業者が電子決済手段を発行する場合、利用者本人の身元確認(KYC)が義務づけられるとともに、概要説明書公表など透明性を確保するための措置が求められている。
また、電子決済手段に関する規則は、暗号資産交換業のルールと類似した部分を持ちつつも、柔軟性を持たせた設計となっている。例えば、価値の安定や償還手続きなど、特有の審査項目が設定されている。特に外国発行の電子決済手段に関しては、海外でのライセンス保有や犯罪利用時の対応措置といった条件が重要視されている。
不正取引防止の対象については、暗号資産と個別4号電子決済手段に限定されており、投資家向け取引では適用補償となる。デリバティブ取引に関する規則についても、議論が進められている状況である。これらの整備は、電子決済手段やスコインテーブルの普及を促進し、信頼性の向上につながることが期待される。

第2部 「パネルディスカッション 」では、パネリストとして近藤 秀和氏(G.U.Group株式会社 代表取締役)、岡部 典孝氏(JPYC株式会社 代表取締役)、モデレーターとして佐野 史明氏(片岡総合法律事務所 パートナー)が登壇した。

ステーブルコイン発行の現状

資金決済法施行から1年が経過したが、ステーブルコイン発行は進展が見られない。現状の交渉状況や今後のタイムラインが課題である。また、日本ではペーパーワークが多く、AML(マネーロンダリング対策)関連の規制がボトルネックになっているため、リスクベースのアプローチや具体的なガイドラインが求められる。日本のAMLシステムが国際標準を達成すれば競争力が向上するが、現在は海外ベンダーへの依存が続いている状況。

AML/CFT(資金洗浄およびテロ資金供与対策)の課題

ステーブルコインの特徴として、パーミッション型とパーミッションレス型が存在する。後者はウォレット間で自由に取引可能で、犯罪利用時の取引停止が発行者に求められるが実現は困難だと考える。
議論の焦点としては、発行者がどこまで監視すべきか。また、コストやリーガルリスクを考慮した現実的な対策が必要である。交換業のように入口・出口での監視を強化するべきではないかと考えるが、全取引を監視するのは非現実的である。

システムリスク管理と新たな金融機関の構想

金融庁がリスクベースアプローチに基づくガイドラインを発表したことを評価し、事業者にとって実用的な枠組みが重要である。ステーブルコイン発行に特化した銀行(ナローバンク)の設立が解決策の一つであると考えている。一方で既存銀行との接続性やシステムリスクが課題になる可能性がある。

トラベルルールと受益権

トラベルルールの影響として、特定信託受益権にトラベルルールが適用されるべきとの議論が進行中であり、受益証券型信託のような仕組みでトレーサビリティを確保する案も提起している。税制対応の課題は、発行者がどのように国税当局に情報提供を行うべきか、具体的な指針が不足している状況である。

運用財産の拡大

運用財産に国債や定期預金が含まれるようになることは、参入業者のインセンティブとなり、競争力を高める。また、国債購入が可能になることは重要である。利回り上昇の恩恵を受けるための拡大が必要と考える。

今後の展望

ステーブルコイン発行やAML(マネーロンダリング対策)対応の課題を解決するため、リスクベースアプローチや実効性のあるガイドラインが求められる。
規制環境の整備が進めば、国内外の競争力向上や新たな金融サービスの実現が期待される。