『比較法的に見た暗号資産の規制状況』
『Stable Coinと日本法 – Libra、Tether、MakerDAO など-』

カリキュラム及び概要

 


『比較法的に見た暗号資産の規制状況』

Coinbase株式会社 日本代表 北澤 直氏
※本議事録はJCBA事務局で作成したものです。文責JCBA事務局。

 (北澤氏)皆さん、こんにちは、Coinbase株式会社日本代表の北澤でございます。私どもCoinbase、まだまだ日本ではビジネスを行うというまでは至っておらず、この時期において皆さま方にどういったことをお伝えできるかということで、考えておりました。弊社グローバルに仮想通貨、暗号資産に関するビジネスを行っている関係上、そういった比較法的に見て、グローバルに今どのような規制のトレンドなのかと、弊社の実際行っているビジネス、そこら辺と絡めて、皆さま方に共有できればと思っております。

 はじめにお願いですけれども、私どもCoinbaseといたしまして、今回お話させていただく内容は、公式に見解ではないというところの含み置きをいただければというところと、社内の内容も、極力入れ込んで中身のある講演にさせていただきたいと思った次第でございますので、記事等にしていただくとかということはしないでいただきたいと思います。後ほど議事録に関しては、協会様の方から出していただくということでありますので、もし何かのご質問等とあれば、ぜひご遠慮なく、私にもお声掛けいただければと思っております。

 一応まだ一般社団法人フィンテック協会の理事も務めておりましす。やはりこういったフィンテックと呼ばれるような、金融というものをもう一回技術の力で再定義しようというような試みの中では、このクリプトというのは、非常に重要な事業のトレンドなのではないかと思っております。そういった観点から、私も実はこの技術にほれ込んでおり、それこれしているうちに、Coinbase、日本でもう一回やりたいという話を随分前から実はいただいていました。前職も私、非常にやりがいあってやっていたものですから、前職を辞するタイミングというところもありましたけれども、晴れて昨年、実は4月に、Coinbase株式会社の日本の代表ということ就任しました。目下、数人仲間を増やしつつ、当局といろんな協議をしているというところでございます。

 きょうお話しさせていただきたいところとしましては、まずざっくりと弊社のご紹介をさせていただくと共に、その後に米国が、特にニューヨーク州のBitLicenseなどが参考になるかと思いましたので、そういったあたりの規制状況というところをお話させていただきます。また弊社、実はグローバルにやってるというところでは、特に英国にオフィスをもう数年前から構えて展開していて、EUへというところをやっておる次第でございます。ですので、そのあたりも少しお話をさせていただくというところと、あとは私の視点から、今後どんなトレンドになっていくのかも含めてお話をさせていただければと思います。

 弊社の概要でございますけれども、今のところ、もう3000万人のユーザーを超えています。1500億ドルの取引高、200億ドルの預かり資産ということで、レギュレーテッド・クリプト・エクスチェンジと、われわれ呼んでいますけれども、ビジネスを行う際に、各準拠法等にしたがって真面目にビジネス行いますという会社の中では、最大手といってもいいかと思っております。今のところオフィスも七つ、従業員は大体700人ぐらいということでございます・・・


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 あとはグローバルに展開をするときに、果たして、日本に従業員が100人いるのかどうかみたいな話はあると思っております。特にグローバルに展開するビジネスは、まずはそのコスト低減という話とは少し別の話で、集中させて事業開発したり、オペレーションセンターを持ったほうが、グローバルで統一感持ってしっかりとオペレーションがまわるところもあったりします。しかし一方で、規制当局としては、そうするとでも、自国の管理下におけない部分、監視下におけない部分があります。そのあたりの折り合いをどうつけるか、みたいな議論というのも、今までの日本のクリプトビジネスというところは、当然日本から世界に展開して活躍している企業様は多数いらっしゃると思いますけれども、ではなくて海外から日本に来るにあたって、その辺りの折り合いをどうつけるのか、みたいなところが、今まさに私どもが、規制当局の方々を含めて議論させていただいてるところだと思います。けれども、この辺りが、万が一にでも、法令であったり、内閣布令みたいなところに、難しい何か制限がかかるような事があってはならないというふうに思って、私なんかは時間を割いて、そういった議論をさせていただいてるところでございます。本協会の方々ともいろんなディスカッション重ねさせていただいておりますし、私どもとしては事業展開したらぜひ協会の一員になって、しっかりともっと貢献はしたいとは思っております。けれども、足元の状況ではやはりそういった法令であったり、内閣府令であったりみたいなところをしっかりと鑑みて、グローバルスタンダードというのがそもそもない中で、何をもってスタンダードなのかというのはありますけれども、海外の企業が日本で展開するということが、日本の特有な、もし仮に規制や法制度というところで阻害されてしまうということであれば、これもう本末転倒かと思っております。なので、この辺りをちゃんと橋渡しをして、整理をしていくというところが、私の役割というふうに今、思っている次第でございます。

 同じ話で、セキュリティーの観点から見た暗号資産業界の現状というところですけれども、弊社、フィリップ・マーティンというCISOがおります。彼はセキュリティーの人間で、これはもうクリプトうんぬんという話ではないところでまず一つ、これだけ顧客の資産、巨額な資産をお預かりしている業界ですので、ここはもう特に資産の保管に関しては、しっかりとセキュリティーというものを、当たり前の話ですが、高めなければいけないというところがあります。その中で、そのフィリップ・マーティンが言うのが、「伝統的な金融機関は自分の銀行の金庫がどれだけ堅牢かっていうとこで別に自慢はしないのに、なぜ今、Coinbaseはセキュリティーがいいから選ばれるって話をしなければいけないのか」ということです。そのことだけで、彼、まだその業界自体がインマチュア、まだ成熟していないのではないかと問題意識を持っております。そして、この辺りのセキュリティーというのも、当然、自社のセキュリティーの観点から、言えない部分ももちろんあると思いますけれども、ただ、基本的なその発想であったり、例えば、何かがハッキングが起きたときの情報共有であったり、というところは、これはもう業界全体でシェアして、みんなで水準を高め合うということが肝要かなというふうには、弊社全体としても思っておる次第でございます。最近ですとやはり、ISOのルール化も含めて、いろんなセキュリティー・スタンダードというのはクリプトに及べるべきではないか、みたいな議論が出ております。先だってのG20の、福岡の部会のところでもFSBの話が出てきて、今、ジョージタウンにいらっしゃる松尾先生も積極的におっしゃったりとか、村井先生もそこに絡んできたり、みたいな話が出てますけれども、弊社としましては、やはりこれだけわれわれも日々攻撃を受けている中で、どうやってそれを未然に防いでいるかは、できる限り情報として共有させていただいて、そういったノウハウはみんなで共有し合って、高め合って、それでひいては業界全体の信用性とか信頼性を上げていくことに資するのではないかと思っております。なので、今後も私どものほうで何かそういった観点からも、皆様方であったり、協会様に何かお手伝いできることがあれば、ぜひさせていただきたいというふうに思っている次第でございます。ありがとうございました。

(全体のデータは正会員・特別会員のみ公開)


『Stable Coinと日本法 –Libra、Tether、MakerDAO など-』

創・佐藤法律事務所 斎藤 創氏

 (斎藤氏)本日、話すのは、ステーブルコインについて、日本法でどのようになってるかということを話させていただきたいと思います。自己紹介をさせて頂きますと、日本法の弁護士及びニューヨーク州の弁護士をしておりまして、もともとは西村あさひ法律事務所で、証券化、デリバティブ、ファンドなどのファイナンスを仕事としてやっていました。2013年夏ごろにビットコインに仕事で出会い、それから徐々にビットコインの仕事が増えてきまして、独立して食っていけるのではないかと思いまして、2015年の4月に独立して今の事務所をつくっています。仮想通貨、ブロックチェーン、フィンテックなどを専門としておりまして、8割ぐらいはそういう関係の仕事をしております。その他に日本ブロックチェーン協会の顧問弁護士ですとか、フィンテック協会で仮想通貨やSTOなどを取り扱う部会の事務局をしたり、あとは、もともとビットフライヤーの社外取締役をしたりということをしています。

 ステーブルコインとは何かということですけれども、あらかじめ定められた資産、多くは米ドルに対して、価格が安定的に推移するように作成される暗号資産、仮想通貨です。全世界でさまざまなステーブルコインがありまして、後でリストを出しますけれども、リストには25種類ぐらい載ってましたし、他にもいろんなステーブルコインがあるというふうに聞いています。

 ステーブルコインのメリットですけども、迅速かつ安価に決済や送金ができます。これは別に、ステーブルコインに限らず、ビットコインですとか他の仮想通貨も同じようなメリットがありますけども、特に国際送金の部分で早くて安い送金ができます。これも仮想通貨一般に適用ありますが、銀行口座のないユーザーや、交換業者でも取り扱い可能です。ただ、他の仮想通貨と違うところ、ビットコインなどの仮想通貨と違って、ボラティリティーが非常に小さいです。ビットコイン、いいところでもありますし、悪いところでもありますけども、ボラティリティが高いので、決済に使いにくいという方もいらっしゃいます。間に決済業者、日本ですとビットフライヤーさんですとか、コインチェックさんのような方が入って、商店が決済を行うことはありますけれども、直接、決済に使うのは、やりにくいという方もいらっしゃって、ボラティリティーが低いほうがメリットだという人はいます。

 あとは、私は調べていませんが、国によっては仮想通貨と仮想通貨の交換の場合には、非課税、利益が実現してないとみられて、非課税な国があると聞いています。そうすると、例えば、ビットコインに投資をしている人が、ビットコインが下がるかもしれないから退避したい、安全地帯に退避したいというときに、USDTetherとかに退避して、また必要であればまた、ビットコインに投資をするということも可能です。あとは、メリットの二つ目の銀行口座のないユーザーや交換業者でも取り扱い可能というところですけれども、海外の仮想通貨交換業者の中には、銀行口座を持っていない交換所がありまして、そういう交換所を使うときは、銀行口座を持ってる交換所でビットコインやUSDTetherとかを買って、他の交換業者に送るということをしている例もあるようです。

 ステーブルコインの種類と例ですけども、私は弁護士なので、きょうの話は基本的には法律の話を、しかも日本法の話をメインに話します。ステーブルコインだから何々法の適応があるとか、何々法の適用がないというような議論は正確性を欠いています。Libraは仮想通貨だからこうだとか、Libraは仮想通貨じゃないからこうだとか、ステーブルコインはこうだからこうだとかいうふうに、いろいろ言いますけれども、正確性を欠きます。ステーブルコインにはさまざまな方式があって、具体的な仕組みが日本法上どうなるかということを、一点一点分析する必要があります・・・


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 金商法と集団的投資スキームの話、ファンド規制ですけれども、Libraの場合にだけはファンド規制を考える必要があって、Libraのシェアトークン、投資家トークンというのは、配当を受けとれるということになっていますので、投資家トークンは日本法上、集団投資スキームというものになるのではと思っております。そうすると、投資家トークンを販売するときには金商法を守る必要があると思ってます。他方、Libraトークンそのものは、配当を受けとれませんとなっていますので、有価証券ではないだろうと思っております。米国法上、セキュリティーについては定義がありまして、ハーウィーテストという判例の基準があります。人からお金を集めてそれを何らかの事業に充てて、投資家がプロフィットを期待しているというのが米国法上の有価証券の定義です。Libraは米国のセキュリティー法とか、日本のセキュリティー法とか、各国のセキュリティー法に該当しないように、うまく作ってるなという印象を受けております。

 まとめですけども、ステーブルコインの中にもいろんな種類があって、Libraトークンとか、ZENとか、MakerDAOとか、Basisとかいろんなものがあります。ZENとかMakerDAOとかBasisは仮想通貨で、USDTetherとかTrueUSDは為替取引で、Libraトークンは、私は仮想通貨かと思っていますけども、金融庁は為替取引と考えているのかと思っております。日本でステーブルコインを出すときには、一つ一つ分析する必要があって、日本で出すときには、さすがに銀行免許を取るよりは仮想通貨のほうが楽かなというふうには思ってます。

 あとは、今、金融庁とかはLibraとかを想定して、新法を作らなくてはいけないんじゃないかという議論をしていると聞いていますけれども、具体的にどのような法律を考えているかは、まだ分かっていません。最近、国会に質問主意書が出て、新法とか考えているのか、みたいなことをいろいろ質問されていましたけども、回答では、いろいろ考えてます、みたいなことが書かれている、回答が閣議決定されただけで、具体的な情報は全然われわれにも降りてないので、どうなるか分からないということです。以上です。

(全体のデータは正会員・特別会員のみ公開)