2023年 年頭所感

形勢逆転

 新年明けましておめでとうございます。

 旧年は、一昨年から一転し、世界的なインフレ圧力の高まりを受けて、多くの主要国・地域の中央銀行が金融引き締め政策に転換、加えてロシア/ウクライナ戦争勃発といった地政学リスクの高まりを受け、投資家はリスクアセットを回避、結果、暗号資産やNFTなど関連するアセットクラスは大幅な価格下落に陥りました。
 また、これら暗号資産価格の下落を引き金とし、TerraUSD(UST)の崩壊から始まり、ヘッジファンド3AC(スリー・アローズ・キャピタル)、レンディング大手セルシウス(Celsius)、我が国でも大きく報道された暗号資産交換業大手FTX の破綻と、世界レベルで産業全体を巻き込んだ大規模な負のスパイラルに陥りましたが、幸運にも、我が国では、2018年の国内交換業者の大規模ハッキング事件を契機に、関わる規制・内部統制等が強化された結果、これら破綻連鎖による影響は最小限に抑えられ、その規制フレームワークの有効性が実証された形となりました。

 前述の通り、世界が混乱に陥っている一方、我が国では、「経済財政運営と改革の基本方針2022(骨太方針2022)」においてweb3.0の推進に向けた環境整備指針が盛り込まれ、自民党web3PTにおける活発な議論、経済産業省のweb3.0政策推進室の設置に加え、大手通信会社や大手広告代理店など民間企業が続々と参入表明するなど、国を挙げてのweb3産業の推進機運が日増しに高まっており、前述の相次ぐ事業者の破綻によって、今後、世界では猛烈な規制強化が想定される中で、すでに規制の基礎的フレームワークが確立し、国家レベルでのweb3産業の推進機運が高まっている我が国においては、いよいよ形勢逆転のチャンスが到来していると言えるのではないでしょうか。

 これらweb3産業の推進機運の高まりに伴い、私どもJCBAでは税制検討部会を中心に税制改正要望をまとめ、年末に公表された「令和5年度税制改正大綱」に、要望していた「法人税における自社発行トークンに対する期末時価評価課税の適用除外」が盛り込まれ、大きな一歩を踏み出す成果をあげることができたこと、また、一昨年より「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」において議論が開始されたステーブルコインにおいても、ステーブルコイン部会を中心に論点整理を行い、自民党や関係省庁と多くの議論を重ね、web3産業推進のための多大な貢献ができたのではないかと自負しています。

 私どもJCBAは、現在加盟会員数132社と国内最大規模の民間業界団体でありますが、本年も、我が国のweb3産業発展に向けて、昨年同様暗号資産税制改正の更なる推進に加え、ステーブルコイン、NFT、DeFi、DAOなど新領域の課題整理や提言など、国内最大規模の加盟会員の知見集約機能、提言機能を発揮し、加盟会員同士連携協力のもと、精力的に活動して参る所存でございます。

 本年一年、皆様にとって昨年以上に良いお年となりますことを心より祈念しております。