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2018年5月度勉強会の様子を公開しました

2018年5月に開催された勉強会、「ICOの法規制の動向」の様子を公開いたしました。

カリキュラム及び概要

  • 第一部 「ICOの法規制の動向」
     アンダーソン・毛利・友常法律事務所 河合 健 氏
  • 第二部 「法規制の現状を踏まえたICOの実務」
     森・濱田松本法律事務所 増島 雅和 氏
  • 第三部 パネルディスカッション
     AnyPay株式会社 山田 悠太郎 氏  QUOINE株式会社 紺野 勝弥 氏  森・濱田松本法律事務所 増島 雅和 氏  アンダーソン・毛利・友常法律事務所 河合 健 氏


 


「ICOの法規制の動向」

アンダーソン・毛利・友常法律事務所 河合 健 氏

 日本のICOの法規制の動向と、海外がどのようになっているのかをお話ししたいと思います。
 まず、日本においてICOが事実上、ほとんど行われていない状況にあるのはご存じかと思います。
 実際にはプロジェクトとしていくつか出ているものもありますが、日本において適法に仮想通貨のICOトークンを販売することは難しい状況になっています。
 ICOに関して、規制当局から出た唯一の公表が2017年10月27日の金融庁でのICOの注意喚起ということになります。まず、ICOはどのようなものかを簡単に定義しており、企業等が電子的にトークンを発行して公衆から資金調達を行う行為の総称と定義しています。これは非常に広範な定義で、トークンを出して皆さんからお金を集めればICOであるという定義になります。

 ここでは対利用者と対事業者の二つに分かれており、対利用者が価格の下落のリスクがあることと、詐欺に遭うリスクがあることを指摘した上で、これらのリスクやプロジェクト内容などを理解した上で自己責任での取引が必要であるという注意喚起を出しています。このような指摘は各国の当局からも同じようなものが出ていますので、この事態は特段には驚くべきことではなく、ある意味で当たり前の自己責任だということが書かれています。
 二つ目が対事業者ですが、事業者はトークンの発行体とトークンを取り扱うその他の方々を両方含む概念になりますが、ICOの仕組みによっては資金決済法や金融商品取引法等の規制対象となり、登録なしにICOを実施した場合には刑事罰の対象となり得るということが記載されています。
 資金決済法に該当するというのは仮想通貨交換業の規制が掛かり得るということでして、金融商品取引法等の規制対象ということは一種もしくは二種の金商業の範囲に当たり得るということです。ここでは、該当する可能性があるということで、それ以上の踏み込んだ内容は書かれていません。

 ICOが投資としての性格を持つ場合、仮想通貨による購入であっても実質的に法定通貨での購入と同視されるスキームについては、金融商品取引法の規制対象となるということが書かれており、セキュリティ・トークンのようなものについては金商法の対象にもなると書かれています。
 実質的に法定通貨での購入と同視されるスキームですが、金商法の定義上、仮想通貨で投資するものはファンドによるみなし有価証券に該当していませんが、先日の金融庁の仮想通貨交換業等に関する研究会で説明されていたのは、金銭での出資の隠れみのとして仮想通貨を使う場合のことを指すという説明がございましたので、日本でICOを行う場合には主に二つの観点が必要です。
 仮想通貨交換業は資金決済法上の仮想通貨に該当するかどうかという点、それから金商法上のみなし有価証券に該当するかどうかはスキーム次第である点、この二点がポイントになるということです・・・

(全体はデータは正会員・特別会員のみ公開)


 


「法規制の現状を踏まえたICOの実務」

森・濱田松本法律事務所 増島 雅和 氏

 ICOの実務についてお話をさせていただきます。
 新しいビジネスですから、世界でICOをやられている方は色々な規制を駆使しながら何とかやり遂げておりますので、そのような発想で行う場合の動的なコンプライアンスの話になります。
 件数になりますが、5月までの間で落ち着いてはきてますが、世界では約300件が行われています。ただ、案件数や金額も去年に比べると落ち着いているというところが見えます。
 また、案件も選別が進んでおり、達成率を見ていただくと100パーセントを達成できている案件は少なく、残りの多くは半分にも達していない案件となります。
 ネットワークの世界で行うので、必ずトップがいて二番目の層があり、他は低いという世界になりますが、現状を見ていただけるとTelegramのTONは1870億と出ていまして、HUOBIやBankeraが比較的上手に金額の上限までたどり着いていて締めているという状態です。
 調達額の第10位で60億円ぐらいの状態になりますので、ICOを行って100億円という世界はありませんが、それなりの金額の調達ができ、これを原資にプラットフォームを作るということであれば十分な調達ではないかと思います。

 他国の現状を概観して見てみると、ICOトークンにより何か規制が緩むことや重くなるということではなく、またユーティリティ・トークンにより何か法的な形が決まるということではありません。
 現状の存在をしているルール、有価証券や他のペイメント手段を当てはめ、それに該当するときには規制するという発想に立っています。

 トークンをどのように分けるか、実はグラデーションになりますので何トークンと線を引くことが難しいと感じておりますが、支払い系トークンとしてのペイメント・トークンがありますが、技術者はこれをプロトコル・トークンと読んでいます。
 最近は色々なところからプロトコル・トークンに相当するものが出てきていますが、このあたりは色々な国で規制対象外になるものが多く、日本では仮想通貨として想定しているのがプロトコル・トークン、ペイメント・トークンということです。
 プロトコル・トークンの上に載るのがユーティリティ・トークンです。技術者はアップ・トークンと呼ばれている領域でして、ERC20で作られているものが典型的ですが、特定のサービスやネットワークでの支払い手段として使うものです。
 ここがICOでよく出てくるトークンになりまして、日本で出すということになりますと仮想通貨や前払い式支払い手段に該当するケースが多いです。
 特定のサービスに使うのか、他のところにも色々と使えるかは程度の問題であり、特定のサービスのつもりで作ったものの、みんなが使うこととなりますとプロトコルだと言われることもあります。
 ここの境は相対的であろうと思います・・・

(全体はデータは正会員・特別会員のみ公開)


 


「パネルディスカッション」

AnyPay株式会社 山田 悠太郎 氏
QUOINE株式会社 紺野 勝弥 氏
森・濱田松本法律事務所 増島 雅和 氏
アンダーソン・毛利・友常法律事務所 河合 健 氏

(アンダーソン・毛利・友常法律事務所 河合氏)
 それでは、山田さんのほうからICOの現状を自己紹介も含めて簡単にお話しいただけますか。

(AnyPay株式会社 山田氏)
 ご存じではない方も多と思うのですが、いわゆるフィンテックベンチャーで2年ぐらいの会社です。
 今、ICOのコンサルティング事業を一つ、決済の柱とICOコンサルティングをやっていまして、国内外のクライアントに対してICO実務のコンサルティングをしています。
 マーケット全体では調達の金額は伸びてますが、一件一件の成功例では集まらずに終わる案件の率が増えてますし、1件ごとの集まる金額も下がっています。件数は伸びているところで、マーケットの伸びが投資家以上に企業側の伸びが出てしまって追い付いていません。
 我々のところに来るご相談の案件も徐々に質が上がっており、競争にさらされてるなというところは感じるところでして、極端な話、2年前であればICOといえば取りあえず集まるという状態ではなくなってきていて、同じ領域の中に必ずといっていいほど過去に同じようなICOをした事例も探せばありますので、そのようなところも含めてどのようなサービスを作るのか、よりフィジビリティの高いものをどのように実現するのかを、より検討しなければいけないフェーズに来ていると感じます。

(アンダーソン・毛利・友常法律事務所 河合氏)
 日本ではなかなか難しいと思うのですが、日本企業が「海外で行う事例も結構ありますでしょうか。

(AnyPay株式会社 山田氏)
 ご多くあります。
 もちろん、日本でビジネス展開をしたので日本でやりたいという方もおられますが、法規制を考えると海外にエンティティを持っていき、日本でビジネスがやれる頃に戻ってこようかという方もおられます。そのまま日本以外のマーケットを探していたら、実は案外いいマーケットがあってということでICOをした後のビジネス展開も海外に移ってしまおうかというところもあったりはします。

・・・

(アンダーソン・毛利・友常法律事務所 河合氏)
 海外でICOを行った事例で、日本でも販売したというのは紺野さんのところはご経験があると思いますが、そのあたりで少しお話しいただけますか。

(QUOINE株式会社 紺野氏)
 我々は昨年11月にQASHトークンというICOを行いまして、国内と海外の両方で販売をさしていただきました。国内は当然ながら金融庁さんに寄り添った形で、法令に順守した形でやらしていただいて、販売のときには我々のQUOINEXという登録をいただいたエクスチェンジの中で、日本円も含めて資金調達ができたというところは非常に面白い事例として、ICOの中でもいい事例を作ることができたのではないかと思っております。

(アンダーソン・毛利・友常法律事務所 河合氏)
 紺野さんのほうでは、シンガポールでQRYPTOSという、仮想通貨と仮想通貨の交換プラットフォームと、それからICOのプラットフォーム的なことも先日立ち上げられたと聞いてますけれども。

(QUOINE株式会社 紺野氏)
 規制の関係上、日本の居住者のユーザーはいないのですが、シンガポールのほうでノンジャパンのユーザーが大体50万人ぐらいいるのですが、そこのユーザーに対してクリプト対クリプトの、いわゆるBINANCEやHUOBI、OKExのようなエクスチェンジであるQRYPTOSをやっております。
 5月の上旬にICOミッションコントロールというICOプラットフォームを立ち上げまして、ICOトークンイシュアのデューデリを我々でした上でなのですが、簡単にICOのランディングページが作れたり、マーケティングができたり、資金調達ができるというプラットフォームを作りました。
 ローンチ後から非常にご好評をいただいておりまして、大体50社ぐらいがパイプラインで待っているような状況で、なかなかそれをさばききるのも大変な状況になっております・・・