『改正金商法の下での仮想通貨トレーディングの様相について』
『勃興する暗号資産ステーキング市場・PoS 技術比較』
『ステーキング部会の活動報告及びステーキングを取り巻く国際的な動き』

カリキュラム及び概要

 


『改正金商法の下での仮想通貨トレーディングの様相について』

株式会社bitFlyer 取締役 リスク・コンプライアンス本部長 三根公博氏
TaoTao株式会社 取締役 丸山顕義氏
アンダーソン・毛利・友常法律事務所 河合健氏

三根氏
 私が、本日モデレーターを務めさせていただきますbitFlyerの三根と申します。本来は、金融商品取引法(以下、「金商法」)の政府令とガイドライン、パブコメ募集も同時に出た上でディスカッションの予定でしたが、まだ出ておりません。金商法の改正の内容については、本日ご参加いただいた多くの方がご理解、ご認識していると思いますが、現状、金商法の改正が出まして、府令待ち、ガイドライン待ちの状況です。府令待ちについては、大きな論点がありますが、まずは河合先生から簡単に整理をお願いします。

河合氏
 デリバティブの話ということで、金商法の改正が2020年5月の末に国会を通って、6月7日に交付されます。6月6日までに施行を迎えますが、施行日は決まっていません。恐らく皆さんの共通認識としては、FXで入れられている通貨関連デリバティブにある程度近しいというか、参考にしたような条文になることは想像が付いていると思います。
 ただ、いくつか論点があって、まず一点目は、JCBAで9月に提言書を出して、ホームページでもアップされていますが、レバレッジ倍率についてです。現状レバレッジ倍率は、日本仮想通貨交換業協会(JVCEA)の自主規制規則で4倍ですが、それを何倍にするかです。一律にすべきか、あるいは例えば通貨で分けるのか、取引の属性で分けるのか、その辺りは大きな議論を呼んでいるところです。これは府令の中、もしくはガイドラインの中のいずれかの形で入ってくるでしょう。
 それから二点目、資金決済法は基本的に、特定の相手と取引をした場合には業務登録は要らないという業規制の適用除外がありません。けれども、金商法はもともと証券、それからデリバティブについても一定範囲のプロ相手の取引では、業登録が不要で、業規制の対象外となっているものがあり、仮想通貨のデリバティブについては、それがどこまで認められるのかという論点です。逆に言うと、一切そういう適用除外を認めないのか、あるいは、過去と同じような、他のデリバティブと同じにするのかです。例えば、相手が金商業者である場合、相手が仮想通貨交換業者である場合、また現在ですと資本金10億円以上の株式会社の場合は適用除外になっています。そうした適用除外の方々に対してサービスを適用する場合は、業規制がかかりませんが、その辺りどうするのかが二点目の論点です。
 それから三点目の論点は、これもJCBAの提言書で触れているところですが、板取引についてです。今のトレーディングボードで、フォワードビットが全部見えて、何枚買う、何枚売るというのが見えている状況での取引、これが金融商品市場に当たるのかです。金融商品市場に該当すると、例えば東証、東京金融先物取引所、そういう取引所の免許が必要になります。取引所の免許はそう簡単に
は取れないので、今の形態を続けられるかどうかの話になります。
 参考までに、FXの話で申し上げます。FXは板形式のものを見せているのは、東京金融先物取引所に取り次いでいる業者さんだけで、自らでマッチングをされているところは2WAY方式といって、1本でしか見れてませんというものです。それと同じにするのか、板取引を認めていくのか、またこれは大きなシステム改修も必要になる分野ですので、重要な点です。
 ただ、これは恐らく府令では書けない話なので、事実上ガイドラインか、もしくはこの言葉がいいのかどうか分かりませんが、行政指導で決まってくるかと思っています・・・


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三根氏
 ありがとうございました。我々業者の中で、株式の信用取引について、証拠金を入れて、その代わり買うだけの代金を全部貸してもらってものを買う、もしくは、売るだけのものを全部借りてものを売るという方法を、仮想通貨の世界で検討している会社も一部あると思います。その場合、貸金業法の登録が必要になります。そういった形でお客さんに対してサービス提供を続けていくことは、理論上できますが、その現実的な可能性とか、使い勝手の良さ等について、河合先生、丸山さんにご見解をお願いします。

丸山氏
 株をご存じの方は釈迦に説法ですが、株の場合、制度信用というものがひとつありまして、どちらかというと制度信用がある方が落ち着きます。それは、理由は簡単で、お金を借りる、借りないの話はそんなに難しいことではありませんが、その株券を借りてくるのが、一定程度供給ができないと、この制度自体が回らないからです。
 クリプトの世界で、その信用取引に近いことをやろうとした場合に、安定してレンディングできる状況が必要になると思います。なので、それができるところが出てくれば制度として成り立つと思いますが、なかなか誰が大口で持っているのか分からない世界ですから、現実的にどうするかは各社さんの工夫の世界かもしれません。

河合氏
 法律の仕組みを踏まえて、若干説明をします。先ほどの話は、デリバティブでやるのであれば金商法上の規制の対象になります。先ほど三根さんからお話があったものは、それはデリバティブではなく、本当にお金を借りて現物の暗号資産を買うとか、現物の暗号資産を借りてそれを売るとかいう形で、事実上レバレッジがかかる形にするものです。なのでこれは、資金決済法と、あとは貸金業法の世界になります。貸金業法というのは、金銭もしくは金銭とほぼ同等のものについてかかってくるので、直接的には暗号資産にはかかってきません。
 いわゆる信用買いの場合、例えば、現物を買う場合に、今持っているお金の2倍とか3倍買おうとすると、その分お金が入ってこないと買えません。だからこの場合は、金銭を貸すので、貸金業に該当します。そして、仮想通貨と仮想通貨の取引だったら、貸金業の話は出てこないわけです。例えば、イーサとビットコインのレバレッジ取引だと、貸金業の話出てきませんが、ビットコインと円の取引だと出てきます。全体としてはそのような整理になります。
 貸金業については、この分野とは全然関係なく過去からいろんな事件が起きて、それなりに一定程度厳しい規制があります。例えば、総量規制があって、要するに借りる人の保護のため、借りる人の生活が破綻しないレベル、年収の3分の1が基本的な目安で、それ以上貸せません。資金決済法の中には、資金決済法の適用範囲であれば、その貸金業が要らないというルールはないので、貸金業を取らなくてはいけません。そうすると総量規制は守らなくてはいけません。そして、総量規制を守るためには、個別の取引をしている人ごとに信用状況といいますか、年収等も全部違う話なので、その辺がどう管理できるかが割と難しいところです。実際にどういうものを取得して、どう判断するのか、貸し付けの上限下限、変えるときにはどうするのか等を一つ一つ工夫して考えていく必要があるので、その辺りは要留意すべき点になると思います。

(全体のデータは正会員・特別会員のみ公開)


『勃興する暗号資産ステーキング市場』『PoS技術比較』

TezosJapan一般社団法人 代表理事 香川英雄氏
TezosJapan一般社団法人 技術役員 古瀬淳氏

香川氏
 TezosJapanの香川と申します。我々は、PoS(ProofofStake)をずっと提唱してきましたが、これは日本だけの現象ではありません。先週からSTO(SecurityTokenOffering)のデベロッパーの方が日本に来日しているのですが、アメリカでもかなり注目されているようです。ただPoSは新しい技術なので、どんなものであるかTezosの観点からお話します。まず私から全体的な話をして、次に古瀬から技術の話をします。
TezosJapanについて、簡単に説明させていただきます。NPO(NonprofitOrganization)の一般社団法人として、2018年の9月に始めて、現在1年と3カ月目ぐらいになります。目的としては、日本国内のTezosの普及活動です。Tezosは、非常に分散の組織を重要視しており、各国、アジアではシンガポール、韓国、中国、香港、そして日本にありますが、それぞれの国がそれぞれのエコシステムを構築するという哲学に基づいています。ちなみに、Tezosのロゴマークも桜の花を入れて日本風にしております。一応、Tezosのプロトコルはオープンソースで、その国でのTezosの経済圏をつくっていきます。JCBAさんには、2019年9月から加盟しております。
 Tezosは、2017年にICOで、当時日本円にして約250億円を調達し、2017年で一番集めたのではないかと注目されております。現在は、約1200億円の時価総額です。
 生みの親は、ArthurBreitmanという、フランス人です。ニューヨーク大学を卒業して、国際情報オリンピックにて銅メダルを取った才能あるプログラマーですが、ビットコインとイーサリアムのソースコード全部読んで、これでは心もとないということで、自身で一から作ったブロックチェーンです。
 Tezosの特徴として、分散を重視しております。組織もそうですが、考え方として分散することがネットワークの健康状態を保つと考えております。また、環境に優しいブロックチェーンということで、PoSの特徴もそうですが、電気を大量に消費して、環境を害するような考え方ではありません。次に高いセキュリティーが挙げられ、Tezosもいわゆるスマートコントラクトを駆使していますが、プロトコルおよびスマートコントラクトの制作において、形式検証(formalverification)といいますが、数学的にそのプログラムが間違ってるかどうかを検証できる高いセキュリティーを、プロトコルおよびスマートコントラクトの両方に使っています。コミュニティーは世界に広がり、もちろんステーキング可能なプロトコルです。

古瀬氏
 TezosJapanの古瀬です。どうぞよろしくお願いします。香川に引き続き、PoSの技術比較ということでお話しします。私は、TezosJapanの科学担当理事をやっています。営業ではないので、Tezosの短所も含め、話をしていきたいと思います。
 今からお話しする話は、まず復習としてProofofStakeは何かと、あとはProofofStakeはいろんな構成要素があり、プロトコル毎でいろいろと違う部分が出てくるので、そこをザッと横断的に眺めていきたいと思います。各プロトコルについて、例えばTezosはこういうPoSを使っていて良いとか、EOSはこうだから悪いとか、そういうことを言うとあまり良くないので、今回の話はあえてプロトコル毎の話をするのではなく、構成技術毎に、横断的に話す形にしたいと思います。
 まずは、復習ですが、パブリック・ブロックチェーンとは、誰でも参加できるpermissionlessネットワークデータベースだということで、特徴としては非中央集権であること、分散による耐故障とか攻撃耐性があること、そこから来てトラストレスによって新たに無から社会信頼をつくることができること、そういったことで注目されている技術です。
 Permissionlessネットワークは誰でも参加できますが、そこで問題が出てくるのが合意形成です。複数のノード、複数のデータベースが分散環境で出てくると、どうしても意見の齟齬が出てきます。その場合、合意形成技術では投票によってどちらの意見を決めるようになっていますが、Permissionlessデータベースでは、投票権をいくらでも増やすことが可能になります。もちろんそれを防いでいくわけですが、そのような、なりすましの攻撃の方法をシビル攻撃と言います。もともとこのシビルという多重人格の女の人の話を基にした小説があるらしいですが、これから名前を取った攻撃手法です。これによって、いくらでも投票数を増やし、なりすましを作ることで、自分の利益になるような合意形成をしようとします・・・


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古瀬氏
 例えば、こちらのグラフが、Tezosでの誰がどれぐらいトークンを持っているかではなくて、委託されたトークン権、委託されたバリデーション権も含めた分布です。ここの一番大きいパイは「その他」で、これは実際には細かく分かれています。他のパイも、今のところ綺麗に分散していて、全体のパイの半分に近いトークンを持っている業者はいないと言えるかと思います。他には、「FoundationBaker」というTezos財団自体が持ってる、比較的巨大なStakeがありますが、それでも全体の3分の1もありません。しかし、今後Coinbase、Binance等が入ってきてどうなるかは、不明なところです。
 いろんなポイントについて駆け足で巡ってきたので、なかなか深いところまではお話できませんでしたが、このような技術比較ができると思います。このようにPoSと言っても、プロトコルによって本当に差異があります。全く同じ概念であっても、全然違う用語を使っていたり、逆に、同じ言葉なのに、実はよく調べてみると、違うプロトコルで使われていたりもあります。なので、この辺り本当に注意して検討していただけると幸いです。以上です。どうもありがとうございました。

(全体のデータは正会員・特別会員のみ公開)


『ステーキング部会の活動報告及びステーキングを取り巻く国際的な動き』

株式会社マネーパートナーズ 鈴木雄大

鈴木氏
 マネーパートナーズの鈴木です。私の本日の前段の話は、先ほどTezosさんにお話しいただいたところと重なる部分があり、時間も押しておりますので、そこは省略しながらお話ししたいと思います。
 あらためて、ステーキング部会の言い出し役である発起人のマネーパートナーズの鈴木です。このタイミングでステーキングの話を国内できちんと始めるのがよろしいかと思い、専務理事を始め、ステーキングに関する議論を部会の形にしていただきたい旨をお願いした次第です。
 ステーキングマーケット概況は、省略しながらお話しますが、ステーキング部会が何を目指していくか、併せて海外のステーキングのマーケットについても、情報共有できればと思います。
 まず、ステーキングマーケットの概要ですが、まず一番インパクトが大きいところは、2020年、時価総額第2位のイーサリアムがようやくPoS(ProofofStake)に移行する話です。これもまた半年ぐらい予定より遅延するのではないかと、今朝の報道に出ていますが、今年中に移行が開始する話となっています。イーサリアムがステーキングに移行するということは、イーサリアムを持っている方もステーキングをして、報酬が得られる可能性が出てきます。そうなったときに、一般の方がどのようにステーキングするか、もしくはそもそもどういう業者がありうるのか、そしてさらに、どういう法律の立て付けで、どういう業者、事業体で運営するのか、そういう議論があり得ると思います。それが2020年にやってきますので、出来る限り早い段階からステーキングに関して、共通認識と言いますか、正しい知識を皆さんに持っていただくところから始めたいと思い、部会の設立に至りました。
 PoWとPoSの違いについてですが、この辺はTezosさんの話があったので割愛していきますが、PoSの場合は、Slashingリスクが発生します。Slashingとは、PoSの場合は、バリデータを運用する人たちは、自分たちの自己資産をロックしてバリデーションをする行為が発生しますが、そのときに、二重の支払い等の不正行為と見なされるものを行ってしまうと、ロックされている自己資産の一部が削られてしまいます。この削られる行為をSlashing(スラッシング)と呼んでいます。マイニングの場合、マイニングのマシンが突然燃え出すということは絶対にないわけですが、ステーキングの場合、その自己資産分が削られてしまいます。イーサリアム2.0では、確か約70%の供託金と言いますか、ロックを掛けてる金額から削られた場合は、強制退場になるシステムであると記憶してます。なので、そういった事業者側のリスクが、今までマイニングとは違う観点で発生致します。しかし、マイニングは先行投資で大きな設備を構えて、かなり安い電気代を引いているところが事業として行っていく訳ですが、PoSではそうした必要ないので、参入障壁自体は下がっていると思います。しかし反面、その条件や継続したサービス運用は難点が一部あると思っています。


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鈴木氏
 また、先ほどTezosさんがベーキングとおっしゃっていましたが、ステーキングをベーキングと呼ぶところもあればステーキングと呼ぶところもあり、用語が統一されていません。なので、例えばステーキング部会の中では、ステーキングが何を指すか、デリゲーションが何を指すか、先々の話ではありますが、部会の中で定義していければと思っております。
 余談ですが、イーサリアム2.0が来年始まりますが、フェーズ的には2020、21、22と徐々に1個ずつスタートする話になっています。2020年に稼働するのは、Phase0と呼ばれるBeaconChainであり、今のETHに代わると言ったら少し語弊がありますが、ETH2のようなトークンが生まれます。こちらは名称も決まっていないと思いますが、このETH2が来年からステーキングできるようになります。最初は一般の方が参入するのは、非常に難しい状態だと理解をしております。しかしながらマーケット自体は開かれてしまうといいますか、一般の方でもステーキングできる状態はあり得ますので、そのタイミングで事業化に踏み切りたいと思う会社さんはいるでしょうし、そうしたタイミングがあると思っています。
 また今年、来年で、実はステーキングが大きく盛り上がってきているのは、非常に特徴のあるパブリックブロックチェーンが出てきているからだと思っています。特に今年はCosmos、Algorandといったブロックチェーンが出てきて、両方ともPoSのモデルで、共に革新性が高く、業界全体から注目されていたかと思います。かつ、来年はイーサリアムのCo-Founderが作ってるチェーンのPolkadotを中心に、かなりの注目株と言われているチェーンが、パブリックチェーンとして稼働します。来年、国内の交換業者さんがどれくらいのこのブロックチェーン、トークンを扱えるかはまた別の話ですが、グローバルの視点としては、来年このマーケットに対する明るい兆しが出てくると思います。さらに追い風になって、イーサリアムの話が出てきますので、来年はこのステーキングという言葉の認知が非常に広がると思います。それまでに、部会としても極力いろんな形で議論を尽くしていきたいと思います。簡単ではありますが、以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。

(全体のデータは正会員・特別会員のみ公開)