『ステーブルコイン部会メンバーが語る、デジタルマネー分類表の解説と日本でのステーブルコインの可能性』

カリキュラム及び概要

  • 日時:2021年2月25日(木) 16:00〜18:00
  • 場所:オンライン配信
  • 第一部 16:00〜17:00 : デジタルマネー分類表の解説
    第二部 17:00〜17:50 : パネルディスカッション
    第三部 17:50〜18:00 : 質疑応答

     
    ■ 登壇者
    白石 陽介氏 : 株式会社HashPort 顧問 / 東京都フェロー(部会長)
    安達 知可良氏 : EY新日本有限責任監査法人 金融事業部(副部会長)
    吉田 世博氏 : 株式会社HashPort 代表取締役(書記)
    河合 健氏 : アンダーソン・毛利・友常法律事務所 外国法共同事業 パートナー
    佐野 史明氏 : 片岡総合法律事務所 弁護士

 


『ステーブルコイン部会メンバーが語る、デジタルマネー分類表の解説と日本でのステーブルコインの可能性』


・ 白石 陽介氏 : 株式会社HashPort 顧問 / 東京都フェロー(部会長)
・ 安達 知可良氏 : EY新日本有限責任監査法人 金融事業部(副部会長)
・ 吉田 世博氏 : 株式会社HashPort 代表取締役(書記)
・ 河合 健氏 : アンダーソン・毛利・友常法律事務所 外国法共同事業 パートナー
・ 佐野 史明氏 : 片岡総合法律事務所 弁護士

(白石)
 本日は、われわれ、ステーブルコイン部会から、『デジタルマネー分類表の解説と日本でのステーブルコインの可能性』と題してまして、ステーブルコインについて、2時間の枠でお話しさせていただきたいと思っております。

 本日のアジェンダですが、こういった流れで進めていこうと思っております。ステーブルコインの分類表というものを、我々は作成いたしました。まだ公表はしていないのですが、内部では、公表内容を固めておりまして、前半ではその内容を先だってご紹介させていただきます。そして、その分類をするにあたって、かなり多くの時間を割いて議論をしましたので。その後日談として、悩んだポイント・明瞭にし難かった部分のご紹介をさせていただきたいと思っております。その後は、コアメンバーのみんなでパネルディスカッションをし、最後に質疑応答を皆さんからいただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。

 まず、ステーブルコイン部会、JCBAについては皆さまご存じのことかと思いますので細かくは申し上げませんが、JVCEAが自主規制団体として存在しており、われわれJCBAは、暗号資産に関わる事業者の業界団体としてさまざまな活動をしております。
 その中でステーブルコイン部会は、現状、日本国内でステーブルコインを、暗号資産交換業や民間の会社が完全にリーガルな形で扱う方法は限られていると思っています。例えば、前払式支払手段の適用除外のスキームでステーブルコインの機能を有するようなものを出されているかたがたなど、さまざまな事業者さんがトライをされていると思います。他方、金融の規制業である暗号資産交換業が、例えば、海外のステーブルコインと呼ばれるようなものを取り扱うといったときにどのような課題があるのかが、業界の中でもまだクリアになっていないのが現状ではないかと考えております。これらを個社ではなく業界として、方向性や整理の内容を検討し、将来的にはそれを啓蒙して広げていくことを目的として設立いたしました。
 今回の登壇者であり、この部会のコアメンバーです。私、白石が部会長を務めさせていただいております。
 副部会長に EY 新日本有限責任監査法人から安達さん、書記に株式会社 HashPort の代表取締役である吉田さんに参加いただいております。顧問弁護士として、アンダーソン・毛利・友常法律事務所の河合先生、また、片岡総合法律事務所の佐野先生にご協力をいただいて、今回の分類表を作成しております。

 では、早速ですが、「ステーブルコインの定義と分類」という項目に入ります。ここからは安達さんにバトンを渡してお話ししたいと思います。安達さん、よろしくお願いいたします。

(安達)
 白石さんありがとうございます。では、安達のほうから説明をさせていただきます。
 こちらのページですが、白石部会長からご説明があったとおりでして、重複するので読み上げませんが、現状、ステーブルコインの取り扱いについてはいまだ不明瞭なところが多くあります。その結果、いろいろな見解が乱立している状態です。そこで、われわれ部会としては、道しるべとなるような整理をすることによって、わが国においてステーブルコインを利用できるように、政策提言などをしていければと考えております。そのためのステップとして、今回、分類表を作った次第でございます。

 いくつか段階を踏んで進めていく必要があると思っております。最終的なアウトプットは、ステーブルコイン導入に向けた提言など、いろいろな方法を模索しながら出していこうと考えております。そこに向けては、恐らく法律的な論点がどうしても出てくると思っており、それを整理していくことが提言に向けた前段階として必要と思っています。いきなり法律の論点から入ると法律に寄り過ぎた議論になる可能性があると思っていて、われわれとしては、まずステーブルコインの性質そのものを理解する必要があり、そのための作業を進めてまいりました。
 その結果、今回、分類表というものを作成しました。この分類表を作るにあたり、留意したポイントがいくつかあります。大きな目的として、ステーブルコインそのものの特徴・性質を把握することがあり、三つほどポイントを挙げています。ステーブルコインを把握するにあたって、その特徴を理解するためには、それに近い性質のものを比較しながら特徴を洗い出していくことが近道と思っています・・・

・・・


(白石)
 この5人でパネルディスカッションを進めていきますが、散発的にならないよういくつかキーワードを用意しました。まず、この分類表を作るにあたって、実はかなりの時間話し合っております。毎週1時間以上を半年以上続けてきました。そこで、ここにも例としてVASPやガバナンスの有無、金融システムへの影響度など記載していますが、一番悩んで議論になったポイントについて河合先生、思い出してみていかがですか。

(河合)
 例えば、政府筋や国際機関などの割とトラディショナルな金融機関を中心に話されている場でガバナンスや金融システムといった話が出たときに、一体何を意味しているのかというところが、実は皆さん漠としています。金融システムへどの程度影響があるのかという問題と金融システムに影響することが良いことなのか悪いことなのかというのは、そもそも立場の違いが大きいと思っています。伝統的な立場の方はどうしても、今の金融システムを是としていて、そこに大きな影響があるとよろしくないという方向の議論になりがちです。しかし、イノベーションが連続的なのか、それとも、ディスラプトがどこかにボーンと入るのかという観点で考えたときに、それが良いのか悪いのかという観点で、今回われわれはできるだけ丸バツを付けて、三角はやめて明確にする立場を取りました。そうでないと特徴が分からないですから。そのときに、金融システムへの影響度が、ある程度ありそうなものはバツとするのか丸とするのか、何がどの程度あれば丸で、どの程度あればバツなのかは、非常に悩みました。

 ここはかなり議論になり、一度部会の中でもコメントをいただいた際にも、所属されているお立場によって少し異なった意見が出てきました。なので、この辺りは、かなり悩んだ末、われわれとしては今回、金融システムへの影響度の大きいものはバツにしましたけれども、それが必ずしも悪いと判断しているわけではないです。今までとは違うということを示しているだけなので、そこには実は価値的評価はそれほどしていません。

(佐野)
 金融システムへの影響やガバナンスを一言で言っても、それぞれ捉える内容によっては中身が全然違って見方も変わってきます。そういう意味では、確か、安全性のトレーサビリティとプライバシーの関係も議論したと記憶しています。結局、トレーサビリティとプライバシーはトレードオフの関係にあるという話がありました。ビットコインは基本的に、取引履歴自体はパブリックな形で見られます。先ほど白石さんがおっしゃられたとおり、VAS の管理してるウォレットであれば利用者との個人情報のひも付けができているので、公表されてる取引履歴と個人情報をひも付けることで、トレーサビリティはある程度高まります。逆にいうと、個人情報のひも付けができない、取引履歴しか分からない状況をどう評価するのかという議論もあった記憶があります。

・・・

(吉田)
 今、先生方におっしゃったいただいた点で、プライバシーとトレーサビリティを考えたときに、何が丸で何がバツなのかは、誰にとっての丸バツなのかによって違ってくるため、非常に悩んだポイントです。アンチマネーロンダリングの観点では、当然、完全にトレーサブルかつクリーンに全てが追えることが丸になる一方で、プライバシーの観点からはそれがバツになります。その点は、最終的には項目を分けた上で評価を行っております。

 河合先生が中国のCBDCの例を出されたように、今、ペイメントが普及していくことで、個人情報が支払い情報とどんどんと結びついています。さらにそれが完全にブロックチェーン上で記録をされる際に、どのように各通貨を評価していくのか。そういった決済の仕組みがどのようにあるべきなのかは、議論させていただいて、私も勉強になったと感じているポイントです。

・・・

(白石)
 はい。この表の目的としてはそうですよね。ですので、個別の事象・通貨の銘柄を表すような評価軸は、入ってないというよりは入れないように配慮して軸を切ったというほうが正しいと思います。いただいたような、個別の部分で差が出てくるものをどう分類表で表すのかは、実は、部会の中で もポイントとしていただいていて、入れるべきかかなり議論をしました。しかし結局、それを入れてしまうと、丸、バツ、三角という、明確な表現では表せなくなってしまうので、あえて入れないようにしたという背景もあります。
 お時間がそろそろですので、締めさせていただこうと思っております。

((司会)
 ありがとうございます。お時間まで議論いただいてありがとうございました。ステーブルコインの特性について、皆さん理解が進んだと思います。
 改めまして、白石様、安達様、吉田様、河合先生、佐野先生、本日はありがとうございました。

(一同)
 ありがとうございました。

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