『DeFi Founder座談会2022』
『web3におけるVC・起業家の在り方について』

カリキュラム及び概要

  • 日時:2022年6月30日(木) 17:00〜19:00
  • 場所:オンライン配信
  • 第一部(パネル) 17:00〜18:00 : 『DeFi Founder座談会2022
    (講演概要)
    国内外でDeFi領域に取り組む起業家を集め、現状のマーケットから、課題、最新DeFiプロトコルまでカバーする座談会を実施します。日本においてはまさに今月6月20日より金融庁でDeFiにについてその性質を捉えようと議論が始まりました。本講演では、DeFiプロジェクトに様々な形で携わる若手起業家の目に映る生前戦の生の声をお届けいたします。

    第二部(講演) 18:00〜19:00 : 『web3におけるVC・起業家の在り方について
    (講演概要)
    web2起業家をVCとして支援してきた観点から、web3で起業するにあたりこれまでのweb2と共通すること、変わらなければならないことについて考察いたします。
     前半:Skyland Venturesのご紹介、web3特化の新ファンドについてトークン投資やトークン覚書について(中村)
     後半:過去の実績において投資をどのように決めてきたか、web2・web3投資家のチームビルディング、web2とweb3の起業の違いについて、日本の課題など(木下)

    ■ 講演者
    第一部
    (パネリスト)
    ロイド・リー氏 : 株式会社HYPERITHM 代表取締役
    鄭 裕寅氏 : Waltz Founder
    窪田 昌弘氏 : LOCKON Co-Founder

    (モデレーター)
    鈴木 雄大氏 : Fracton Ventures株式会社 Co-Founder

     

    第二部
    木下 慶彦氏 : Skyland Ventures CEO & General Partner
    中村 公哉氏 : Skyland Ventures Principal & Legal Partner

 

第一部 :
『DeFi Founder座談会2022』

(パネリスト)
ロイド・リー氏 : 株式会社HYPERITHM 代表取締役
鄭 裕寅氏 : Waltz Founder
窪田 昌弘氏 : LOCKON Co-Founder

(モデレーター)
鈴木 雄大氏 : Fracton Ventures株式会社 Co-Founder

 

(司会)
 6月度のJCBA勉強会を開催します。第1部は国内外のDeFi領域に取り組むファウンダーの皆さんに現状のマーケットや課題、最新のDeFiプロトコル等についてさまざまにお話しいただきます。パネリストは、Hyperithm代表取締役のロイド・リー様、WaltzのFounderである鄭裕寅様、LOCKONのCo-Founderである窪田様の3名の方、モデレーターはFractonVentures株式会社のCo-Founderである鈴木雄大様に務めていただきます。それでは、鈴木様、以降の進行をお願いします。

(鈴木)
 FractonVentures株式会社の鈴木雄大と申します。宜しくお願い致します。本日はDeFiをテーマに、識者の3名の方にお声かけさせていただき、議論していきたいと思っています。
 最初に、パネリストの皆さんから自己紹介をいただきたいと思います。ロイドさんよりお願いします。

(ロイド)
 Hyperithm代表取締役のロイド・リーです。当社は暗号資産の運用をメインとしてビジネスを展開しています。現在、主に三つの事業を展開しており、一つ目は暗号資産の運用です。自己勘定の運用と、日本では特例業務でファンドを立ち上げているため、LP資産運用も含めて行っています。二つ目は暗号資産のブローカレッジの事業です。韓国にある当社子会社が交換業の免許を取っており、主に韓国のクライアントに対してサービス提供しています。三つ目の事業は、本年から立ち上げたWeb3ファンド事業です。一つ目の暗号資産の運用は主にアービトラージ中心のアルゴリズム取引がメインですが、Web3ファンドはVCファンドのようにアーリーステージのプロジェクトを対象にトークン投資を行っています。また、Web3のサービスも同時に開発している状況です。
かつては中央集権型取引所のみを使っていましたが、DeFiのエコシステムが大きくなっていく中で資産運用の絡みでDeFiとも関わりがあります。DeFiをヘッジし、資産運用に使う、あるいは、DEX、分散型取引所と中央集権型取引所の取引を行っています。Web3に関しては当然ながらDeFiプロジェクトも投資対象として検討しています。

(鈴木)
 鄭さん、お願いします。

(鄭)
 WaltzのFounderである鄭裕寅です。Waltzは、Solanaというパブリックブロックチェーン上でDeFiのプロトコルを開発している会社です。私は、もともと日本と米国の金融機関でキャリアを始め、今回、Waltzを創業する前は、ベンチャーキャピタルでフィンテック領域の投資をしていました。今回、私自身が起業をし、DeFiのプロダクトを作っている状況です。
 私自身の経歴は、どちらかというとキャピタルマーケットやアセットマネジメントの領域になるため、その領域において分散型金融でどのようなプロダクトがあると今後の金融にとって貢献できるか考えながら、現在、イーサリアムとはまた異なる特徴を持ったSolanaのチェーン上でプロダクトを開発しています。

(鈴木)
 最後に、窪田さん、お願いします。

(窪田)
 LOCKONのCo-Founderである窪田です。当社では、ブロックチェーン上に広がるオンチェーンの情報が何十億から何百億とある中で、そちらを分析していき、優秀なトレードを見つけ、ユーザーに再現してもらうようなプロトコルを開発しています。基本的に、ドバイ、ベルリン、ダラス等に分散した組織で開発しています。私自身は2017年からブロックチェーン関連の事業者として参入しており、その後、ブロックチェーン周りのプロダクトで2度の事業売却をし、今はLOCKONの事業に集中しています。

(鈴木)
 ご紹介ありがとうございました。モデレーターを務めるのは、FractonVentures株式会社のCo-Founderを務める鈴木雄大です。来月に書籍を出版予定であるため、よろしければご購入ください。本日のトークテーマとして、日本のDeFi、DeFiトレンド、VCの温度感、DeFiストラテジー、法規制、CeFiVSDeFi、アジアのDeFi、スリー・アローズ・キャピタル問題、Terraショックといった項目を設けています。直近は、マーケットが冷え込む傾向が出ている中で、その引き金を引いたのはTerraショックとスリー・アローズ・キャピタル問題かもしれません。この話題に限らず、現在のマーケットの状況や皆さんの各事業領域に応じて感じ方が異なると思われるため、起業家の皆さんが直面する調達環境やパートナーシップを結べる先がどのような温度感なのかといったところを伺えれば幸いです。

・・・



 

(鈴木)
 そのお話は非常に残念ですね。時間も迫ってきたため、トレンドになりそうなもの、注目されているトピックについて一言ずついただき、最後の締めにしたいと思います。

(窪田)
 DIDやSBT、ZKで共通のものがあると思っています。それは、適宜適切なタイミングで適切な情報を渡す形である点です。病院に行くにしても、極端な話、医師に自分の名前を伝えなくても症例や過去の服薬履歴が分かれば診察はできるはずです。自分の個人情報を住所まで全て渡す必要はなく、Web3の文脈だと適宜適切な必要情報のみを渡すという形がスタンダードになり、市場としても大きくなりそうだと感じています。

(鄭)
 現在、私はSolanaチェーンで作っていますが、本年はマルチチェーンの発達もかなり進み、接続周りのニュースも豊富になるのではないでしょうか。実際にSolanaから始め、他のチェーンに接続するチームも増えてきています。接続する技術が発達していく中で、どのチェーンから入ったユーザーであってもスムーズにDeFiへ入ってこられるといった世界が進んでいくでしょう。われわれもそのようなところを意識しながら取り組んでいきたいと思います。

(ロイド)
 昨今、ステーブルコインがデペグや攻撃をされている中で、100パーセントのassetbackedであることは大事だと思います。例えば岡部典孝さんのJPYCやUSTCが採用しているモデルもあります。algorithmbackedの危険性は今回のTerraの事例を通じて皆が認識したため、assetbackedにもう一度注目が集まるのではないでしょうか。LUNAの事件でファーストジェネレーションのアルゴリズムのステーブルコインが改善できる余地も生まれたと思います。LUNAと同様のことが起きないように適切な設定ができれば、アルゴリズムによるステーブルコインとしても機会はあるのではないかとも考えています。

(鈴木)
 コメントありがとうございました。普段はメディアが主な情報源となるDeFiの話を、ファウンダーのお三方からリアルに伺える非常に貴重な機会になりました。質問があればお願いします。

(木下慶彦)
 DeFiの枠内で、顔出しも含めて運営メンバーを完全にオープンな状態にしている有力プロジェクトは数多くあるのでしょうか。DeFiのプロジェクトは基本的に匿名のイメージがあります。顧客から、そのプロジェクトが匿名か否かの質問もよく受けます。匿名プロジェクトを投資家としていかに扱うかといったところが気になっている部分です。

(鈴木)
 イーサリアム系のコアなDeFi等はファウンダー陣もオープンです。例えばSolana系でもUXDにしろ、Cegaにしろ、両方ともファウンダー含めチームもオープンにされています。ニックネームを多用していることもあるため、匿名と捉えるか、ニックネームと捉えているかといったところはありますね。例えばDeFiで詳しい0xMaki氏はニックネームとして捉えると、それほど違和感はないのではないでしょうか。アノニマスというわけではないという意味です。

(木下)
 なるほど。分かりました。

(司会)
 以上で第一部を終了とさせていただきます。
 第1部のパネリストの皆さま、モデレーターの鈴木様、お話いただきありがとうございました。

 

 

講演資料・議事録全文・動画アーカイブは会員専用ページご確認いただけます。

 

 

第二部 :
『web3におけるVC・起業家の在り方について』

木下 慶彦氏 : Skyland Ventures CEO & General Partner
中村 公哉氏 : Skyland Ventures Principal & Legal Partner

 

(司会)
 それでは、第2部をスタートします。『Web3におけるVC、起業家の在り方について』をテーマに、前半はSkylandVenturesのPrincipal&LegalPartnerである中村様、後半はCEO&GeneralPartnerの木下様にお話をいただきます。本年の4月に、SkylandVentures含む4者共同で『J-KISSと連動したトークン付与覚書』のひな形が公開されています。これまでVCとしてWeb2領域の起業家を支援されてきた観点から、Web2とWeb3の共通する点、変わる点等を中心にお話を伺えればと思います。

(中村)
 SkylandVenturesのPrincipal&LegalPartnerの中村公哉です。提示されたテーマと若干異なるかもしれませんが、最初に法務系の話をして、後半に木下から全体感のお話をさせてもらえればと考えています。

 私はもともとスタートアップ専門の法律事務所で弁護士を務めていましたが、もう少し事業サイドを見たいと考え、法律事務所を離れたところで木下と出会いました。彼から、Web3領域を取り組みたいが法律周りが難しいという話を聞き、2022年3月にSkylandVenturesへ入社したという経緯です。
 実際に始めてみると、本当にさまざまな問題点がありました。主に3点あり、1点目は、トークン投資の課題です。資金決済法との関係で、トークンは日本で売れない、一歩間違えばNFTも危ないといった話があります。2点目は、日本の大半のVCファンドはトークンを持てないという問題があります。日本のファンドは投資事業有限責任組合、LPSの箱で運営しているため、その都合上で持てないわけです。3点目は特に重要であり、事業ごとの課題があります。さまざまな事業がある中で、これまでブロックチェーン等を想定した法律がありませんでした。既存の法律からグレーやアウト判定が難しい問題が乱立しています。今回は1点目と3点目について深掘りしてお話しします。

 最初に、トークン投資に関する課題です。従来、資金調達の手段は、デットファイナンスとエクイティファイナンスの大きく二つがあり、今回、Web3領域ではトークンファイナンスが出てきました。トークンファイナンスにも何種類かあり、トークンのみ、いわゆるSAFTのようなものと、トークンとエクイティのみの形態があります。広がりを見せている領域であり、今後もさまざまなパターンが生まれるでしょう。すぐにトークン発行はせず、エクイティでまず集めて、しっかりとプロダクトを作ってから独立させていきたいと希望する人も増えているかもしれません。ユースケース、ベストプラクティスがまだない状態、日々変わりゆく状態なのだろうと言えます。
 3月に入社した当時は、『SAFE+トークンワラント』が主流になるだろうといった感がありましたが、今、起業家の方の話を聞くと、トークンはいったん保留でいいかなと判断するプロジェクトも増えてきた印象です。

 スライドには、事業ごとにトークンとどのように絡めていくかという話で、AからDのパターンを示しています。Aは、プロダクトもトークン設計もない状態です。この場合は、これまでと変わらないため、J-KISSかデットファイナンスになるかと思います。BとCが今回の特徴的なところです。まずBだとプロダクトがある、もしくはプロダクトのプランがあり、トークン設計をしたいというケースです。ここでは、SAFT、トークンで最初に集めるパターン、株を発行してから後にトークンに転換するパターンが出てきます。Cは、プロダクトを最初に作っており、まだ決まってないが、ゆくゆくはトークンを出していこうかといったイメージです。ここではトークン設計がまだできていないため、SAFTで集めることはできません。このパターンであるとかなりもめていたケースが多いと感じます。最初にエクイティファイナンスであったにもかかわらず、途中でトークンファイナンスにされるとエクイティの価値が下がってしまうという現象が起きます。投資家としては、勝手に切り替えないでほしいといった話になるわけです。一方、起業家側にトークン発行の希望があるといった際にもめてたケースが多かったと記憶しています。
 Dはプロダクトもトークン設計もありのケースです。こちらはBと同様、SAFTでもよく、エクイティ+トークンワラントといった形でもいいのでしょう。Cのパターンが問題かと捉えています。エクイティを発行し、後にトークンへ転換する際にもめるわけです。この点に関してある程度の合意をつくっておきたいといった議論が、私がSkylandVenturesに入社した3月辺りから増えていました。その状況を受けて作ったのが今回の『J-KISSと連動したトークン付与覚書』です。

 覚書の意義は、先ほどのCのケースのように、トークン発行時にもめそうなところを事前に決めておくところにあります。特に、付与のパーセンテージとロックアップの期間等がもめやすい点かと考え、そちらを決めておくよう覚書を作ったという意図があります。
 具体的な契約書のひな形を見てみましょう。トークン系に見識がある増島雅和氏と共同で作成しています。こちらはBのパターンです。最初は株だが、後にトークンへ転換するかもしれないといった際に使えるものです。重要点の一つ目は、トークンに転換する際に何パーセントを渡すのか事前に決めておくことです。ひな形に3パーセントと入れていますが、出資額に応じて変わります。二つ目は、ロックアップに関する取り決めです。2022年4月当時の相場感として、1年程度は完全にロックし、その後、2年をかけて1カ月当たり24分の1ずつ開放していく形がいいのではないかと考えました。ただ、これは変わりゆくものであるため、交渉をしていく必要もあるでしょう。この2点を押さえておくべきと考え、今回の覚書を作成したわけです。
 法的マターの話をすると、付与の形になっているのですが、資金決済法上、トークンを販売してしまうと、暗号資産交換業の登録が必要になる可能性が高いため、無償で渡す付与という形にしています。パーセンテージとロックアップ以外を変えると違法になってしまう可能性があるため、この2点のみ相談をして決めておくというイメージです。覚書はJ-KISSと連動する形で作っています。資金調達時、あるいは、J-KISSで調達した後にトークンを考えたいといったときでも締結を検討してもらっていいと思います。

(木下)
 少し補足します。日本で暗号資産交換業の登録をしていない主体がトークンを販売するのは違法行為に当たります。暗号資産交換業の登録がないBinance等からトークンを購入するのはよいのですが、販売している側は違法業者となります。われわれ投資家サイドから考えると、トークンの販売元が違法業者であれば、その後のEXITがないため、結果、そのようなことはできないという大前提があります。従って、付与型、無償付与といった話が出ているわけです。

・・・

(司会)
 ありがとうございました。実例も交えてVC側のお考えを伺える貴重な機会になりました。
 中村さんに質問です。冒頭に、2022年3月頃は、トークンでの調達の需要がますます増えてくると考えていたけれども、実はトークンでの調達を保留にしたいと言ってくる人も出てきたというお話がありました。市況やWeb3周りのグローバルでの動き等が関係しているのでしょうか。

(中村)
 詳しくは伺っていません。その方の場合は、自社の事業に関してそこまでトークンを絡める必要があるのかというところに立ち返り、トークンは無理やり絡めないほうがむしろ広がると考えて、やめる方向になったと聞いています。VCに必ずしも正直なところを話しているかというと分からないため、市況等も関係するのかもしれません。

(司会)
 ありがとうございます。Web3領域で、今後、スタートアップ、トークン投資等を積極的に進める環境も出てくるのではないかと見ていますが、木下さんのほうでも、覚書から始まり、ゆくゆくはJ-SAFT等へのステップも検討されていると思われます。今後の見通しや展望等を聞かせてもらえるとありがたいです。

(木下)
 見通しや展望に当たるのか分かりませんが、私が考えていることを2、3点述べます。私は、13年ほどVCの仕事をしてきましたが、日本のインターネット産業は全くグローバルに展開できていません。ソフトバンクはグローバルに出ていますが、投資をしているのみであり、インターネット事業が海外で売れているわけではありません。海外売り上げがあるのはせいぜいWeWorkとArmの2事業程度です。メインはソフトバンクモバイル、ソフトバンク・ビジョン・ファンドの投資事業でしょう。インターネットを通じて海外の人たちにサービス等を届けるといった成功は日本人の未到達領域であり、日本は外貨を稼がない限り先がないと言われている中で、私が期待しているポイント、わくわくしているところはそのような領域への参入です。
 現在、当社には海外大生もいますが、今までは彼らもグローバルなスキルを生かせる三菱商事等で働くほうが良かったのでしょう。日本のインターネット産業にグローバル性はほぼないのがその理由です。しかし、Web3の会社はグローバル性があるため、皆が働きたいといった流れになっていくのではないでしょうか。つまり日本の最優秀層が入ってくるような土壌になってきたわけです。SkylandVenturesが変わったわけではなく、Web3が現れたことによる影響が大きいと言えます。世界に向けてチャレンジできるという期待感で、私自身はエキサイティングしています。

 アンドリーセン・ホロウィッツの動画を見たことがない方はぜひご覧ください。『dealstructureincrypto』と書いてありますが、その中で使われている資料の抜粋です。traditionalstartupはエクイティのスタートアップであり、投資ラウンドはシード、シリーズA、B、C、Dと進んでいきます。グローバルでも上場するには通常10年ほど要します。UberやAirbnbもその程度かかっているでしょう。一方で、クリプトのスタートアップはシードとシリーズA程度しかなく、2回ファイナンスがあればBinanceなどにトークン上場をするといったスピード感の世界です。この流れが1年間で完結します。その後もプロジェクトは続きますが、中には価格が付かなくなりクローズするプロジェクトも出てきます。ただ、それは東証上場、海外上場でも同様のケースがあり、クリプトの世界が黎明期たるゆえんだと捉えています。
 このスピードの速さにはさまざまな要因があります。オープンソースの概念が強いため、コピーができる点もあるでしょう。お金の回りが速いことによって、そこに関与してきた人たちが、1年や3年などの短期間で実績を得ることが可能であるという世界観も存在します。エクイティでは、10年働いてようやく株を持っていて良かったという世界観であるため、話を聞いても全くうらやましくないと感じてしまいます。エクイティベースのスタートアップで働く人に対して私が事業相談に乗る際は、トークンプロジェクトに関わるしかないといった話をよくしています。トークンをもらったほうがいい、あるいは市場でイーサリアムやビットコインを買うほうがいいといった話をするぐらい、私はクリプト業界の速さは価値だと捉えています。グローバルな世界に行くことができ、とにかくスピード感があるところがWeb3の特筆すべきポイントです。
 私はVCを13年運営してさまざまな会社を見てきましたが、世の中に大学時代に夢見たスタートアップの姿があったかというと、必ずしもイエスとは言えません。出資しても働かず遊んでばかりいるレベルの低い社長も多く見てきました。13年取り組んできて、私が大学時代に夢を見ていたスタートアップが世の中にあるとすれば、一つはWeb3領域だと思います。先日、NFT.NYCにも参加しましたが、1万6000人ほどの参加者が集まりました。夢見たスタートアップが今ここにありといったイメージです。皆がカンファレンスに参加し、楽しい場でもあり、国籍関係なく立ち話のようにいろいろな人たちと情報交換をし、キャッチアップするといった理想の姿がそこにありました。

(司会)
 コメントありがとうございました。第2部は以上で終了します。SkylandVenturesの木下様、中村様、本日はお時間をいただきあらためて感謝申し上げます。

 

 

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