『米国の暗号資産市場における規制機関と規制の概要-日米間の比較を交えて』
『DeFiトレンド(2021下半期)』

カリキュラム及び概要

  • 日時:2021年6月30日(水) 17:00〜19:00
  • 場所:オンライン配信

 


『米国の暗号資産市場における規制機関と規制の概要 – 日米間の比較を交えて』

千野 剛司 氏 クラーケン・ジャパン 代表

 皆様、クラーケン・ジャパンの千野剛司と申します。本日は米国を中心として、海外では暗号資産市場に関してどういった規制を行っているのか、かなりハイレベルではございますけれども、その概要をまとめてまいりました。また、米国の規制と日本の規制を比較した上で、一概に優劣をつける話ではありませんが、その特色をまとめました。そういった比較から、本邦の暗号資産市場がさらに発展していくためには、どういった課題を解決していく必要があるのか、ご参加の皆さまと議論をさせていただければ非常に幸いであります。

 まず、私の自己紹介をさせていただければと思います。先ほど、廣末会長からご紹介いただきましたとおり、今期 JCBA の理事を務めさせていただいております。私はキャリアのスタートが東京証券取引所(東証)で、そもそもここが会社だということをご存じない方もいらっしゃるかと思います。株式会社で、現在は東証と大証等が合併して日本取引所グループ(JPX)という会社になっていて、かつ、東証の1部上場企業になっているということで、プライベートカンパニーと言ったら語弊がありますけれども、私企業で利潤を追求している会社です。私のキャリアで特に力を入れていたのが、2008 年の金融危機以降、破綻してしまった証券会社や金融機関をどういうように処理していくのかというプロセスを改良していくところにかなりの多くの時間を使い、ブラッシュアップ・高度化を担当しておりました。その後、JPXグループ全体の経営企画を担うということで、精算・決済分野を中心に経営企画を作り、中期経営計画等々の担当を行っていました。その後縁あって、PwC Japanに移りました。PwCではCEO Officeオフィスという所に所属をして、PwC全体の経営改革を担ってまいりました。その後、2018年にクラーケンに縁をいただきまして、クラーケンを運営する米国のPayward Inc.という会社に入社をし、2020年の3月から日本の代表を務めております。

 本日の目次です。まず冒頭に、米国の規制機関と概要について見ていきます。米国は全米ベースでの規制と州独自の規制という二重構造になっておりますのでそちらについても見ていきます。3 番目に、米国規制に関して最近、強化の動きが感じられるヘッドラインがかなり報じられています。こういったものをシェアしながら、今後どうなっていくかということについて少し言及できればと思います。

 米国の話を終えた後に、本邦・日本の規制の概要について見ていきます。もちろんこれは本日ご参加の皆さまには釈迦に説法になり大変恐縮ですが、資金決済をはじめとした規制についてまとめています。最後にまとめとして、日米の比較をした上で、優劣をつける話ではありませんが、それぞれの長所や短所について見ていった上で、最後に皆さまからご質問を受け付け、議論させていただければありがたいと思います・・・


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 一方で、短所です。法令によって暗号資産および暗号資産交換業の定義が明確化されているので、立法時に想定してなかった商品やサービスが登場したときに対応に時間がかかります。場合によっては法改正が必要です。『暗号資産が何か』という問いとして、暗号資産のマーケットというのは非常に発展・展開が早いマーケットでして、よく「日進月歩」ではなく「秒進分歩」というふうにいわれています。それぐらいのスピードで変わるので、海外で一般的に暗号資産交換業の範疇で取り扱われている商品やサービスが、国内では定義に則さないために取り扱いができないケースが存在しています。これらによって、大変不幸なことに、日本で提供できない商品やサービスは実態としては海外の無登録業者に流出してしまっています。当局は警告を出すことができますが、日本にいないのでその取り締まりはなかなか難しいという実態です。

 以上が日米間の比較です。繰り返しになりますが、優劣の話ではないのですけども、1 点、目的や観点を絞ったという点について申し上げると、米国型の様子見というのが、ある程度ワークしていると思っています。日本の場合は、資金決済法で暗号資産の定義が非常にかっちり決まってしまっていて、現在の定義が、海外・国内で誕生している暗号資産の定義に必ずしも則さないものも出てきています。こういったところから、今後、日本の暗号資産マーケットをより盛り立てていく、健全に発展させていくためには、どういった規制のフレームワークが望ましいのかということを業界としてもきちんと考えた上で、当局、そしてその立法機関と適切にコミュニケーションを取っていくことが必要だと考えています。

 以上、日米間の規制の違い、そして、米国の規制当局・規制の概要についてお話をさせていただきました。ご清聴ありがとうございました。ここから先はご質問・ご意見がございましたらよろしくお願いします。そして、何よりも、どういうふうにしていくのがいいのかということについて、健全な議論をしていくということが必要だと思いますので、そういった観点でご発言いただけると大変ありがたいです。よろしくお願いいたします。

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『DeFi トレンド(2021 下半期)』

平野 淳也 氏 株式会社 HashHub CEO

 あらためまして、よろしくお願いします。株式会社HashHubの平野と申します。現在、日本を拠点にしてHashHubという会社を経営しています。HashHubの事業としては、クリプトブロックチェーンのリサーチサービスであるHashHubResearchと、HashHubLendingという貸し暗号資産のサービスを提供しております。その他に、東京都文京区の東京大学の近くで、ブロックチェーン領域で仕事をする人のためのコワーキングスペースなどを展開しています。会社としては、大きくリサーチと金融という二つの機能を軸にしています。HashHubResearchというリサーチ事業、HashHubLending、その他に内側で自己勘定の投資部門を持っていて、厳密にはリサーチと金融という二つの機能を持ちながら、複数の事業を展開していくというのが会社の軸となっております。

 本日はDeFiの最近のトレンドをテーマとしてお話しさせていただきます。DeFiは暗号資産の一分野ですけれども、構造がますます複雑になっていて、それなりに時間をかけて追っかけている人も、全体像を把握することが結構困難になっているのではないのかなと身をもって実感しています。

 今回は、その中でも主要なトレンドというのを、大まかには七つの要点を踏まえて解説したいと思います。2021年は今日で上半期が最後でそろそろ下半期に差し掛かるというタイミングですので、上半期の振り返りと下半期の予想のようなものを若干込めて、この七つのトレンドをピックアップしております。

 本日参加してくださってる方は、暗号資産・ブロックチェーンの領域でフルタイムで仕事をされてらっしゃる方ばかりだと思いますので、既にご存じのトピックもかなり多いのではないかと思いますが、そんな中でも参考になる所を見つけていただければ幸いです。あらためまして、本日はよろしくお願いします・・・


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 最近ではDeFiの新規ユーザーが増えています。そういった新規ユーザーほど、こういった洗練されてないプロトコル―そういうプロトコルに限って表面利回りが結構高くてーの表面利回りだけに引き寄せられて使っている傾向が非常に多いのではないのかと感じています。インフルエンサーなどがSNSでユーザーを集める件数も増えていて、それによってあまり洗練されていないユーザーの資金が流出する傾向にあるのかなと思っています。これは国内外で同じ傾向であり、このような状況は自然に解決するのは考えにくく、何かしらの規制の議論が始まるタイミングではあると思っています。私としても、そろそろ始まってしかるべきタイミングなのかなと考えています。しかし現段階では、こういった実効的なDeFiの規制はいずれの国でもまだ始まっておらず、最近では世界経済フォーラムからPolicy-MakerToolkitというものが発表されていて、それを見てもまだまだ議論の初期段階であると感じています。ただ、世界経済フォーラムからそういったものが出てきているように、まだ現実的な規制の枠組みが年内にできるといったことは多分どの国にもないと思うのですが、足音が聞こえ始めているのが今の状況なのではないかと考えています。

 規制当局側もそのように考えているのでしょうし、逆にDeFi側からもそういった必要性を考える人が増えているのではないのかと考えています。最近では、Uniswapのガバナンスフォーラムで、トレジャリーにある独自トークンのUNIのアロケーションの一部を使って、非営利団体の運営組織としてDeFiEducationFundというものを設立する提案がなされています。ガバナンストークンUNIの大口ホルダーが結構賛成しているので、これはそのまま可決されるのではないかと思います。このDeFiEducationFundの目的はDeFiについて規制当局と議論をする団体で、DeFiの実行者の立場から業界団体みたいなかたちで機能していくと。それがDAOの資金の一部を使って、非営利団体運営組織というものをつくろうと。そういう取り組みがなされています。いずれにしても、すぐには規制が何か具体的になることはなかなかないと思いますが、少しずつ足音が聞こえてきています。そういった傾向は多分、今年の下半期にさらに目立ち始めるのではないかなと考えています。

 今回、私のプレゼンテーションとしては以上です。ご清聴ありがとうございました。

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