『web3ホワイトペーパー2024の解説』
『web3事業のライセンスのありかた~暗号資産交換業及び電子決済手段等取引業の仲介制度について』

2024年5月9日(木)に開催された5月度勉強会は、4月12日に自民党デジタル社会推進本部web3プロジェクトチーム(web3PT)より、「web3ホワイトペーパー2024~ 新たなテクノロジーが社会基盤となる時代へ~」が公表されたことを受け、web3PTワーキンググループのメンバーが解説した。

第一部 『web3ホワイトペーパー2024の解説』

・河合健氏:アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 パートナー
・白石陽介氏:株式会社MZ Cryptos 代表取締役
・遠藤努氏:長島・大野・常松法律事務所 パートナー

今回のレポートでは、当ペーパーの中から特に関心が高いテーマとして、税制・web3事業ライセンス・ステーブルコインについてを選定して詳述する。

税制については、暗号資産取引から生じた所得に対する厳しい課税が論点にあげられている。現状では税率55%で課税され、他の暗号資産と交換した場合にも所得税が課される。これに対し、申告分離課税の導入や損失繰越控除(翌年以降3年間)を認めることや暗号資産デリバティブ取引にも同様の措置を適用することが検討されるべきである。また、暗号資産同士の交換ではなく、法定通貨に交換した時点で課税する制度の導入が求められる旨の解説があった。

web3事業ライセンスについては、現行の暗号資産交換業に関する規制が障壁となり、web3事業に本格的に進出できるようにするための対処等が論点としてあげられた。暗号資産関連ビジネスの多様化に対応する柔軟な規制の枠組みや暗号資産関連ビジネスがより適切に規制されるような見直し、利用者と暗号資産交換業や電子決済手段等取引業を仲介することができる業の創設等の対応を検討すべきである旨の解説があった。

ステーブルコインについては、通貨価値が安定したデジタル資産であり、これを銀行が発行することで金融市場の効率化や送金サービスの改善が期待されているが、ステーブルコインの早期の発行・流通及び自主規制団体の設立に向けて必要な取組みを進めることや法的地位や銀行による発行・流通の適切な環境整備や円建てステーブルコインの発行に対する裏付け資産を国債で保有することの是非等の議論が注目されている。法的地位や規制の整備が課題となっており、適切な枠組みの構築が課題である旨の解説があった。

本ペーパーを通じて、web3分野の事業発展を促進するため、持続可能で包摂的な成長を目指していく姿勢が提言から伺えた。

続いて第二部では『web3事業のライセンスのありかた〜暗号資産交換業及び電子決済手段等取引業の仲介制度について』、当会でこの課題に取り組むweb3事業ルール検討タスクフォースより課題やニーズの解説があった。

 

第二部 『web3事業のライセンスのありかた〜暗号資産交換業及び電子決済手段等取引業の仲介制度について』

・安達知可良氏:EY新日本有限責任監査法人 金融事業部アシュアランスイノベーション本部 アソシエートパートナー
・畑圭輔氏 : 株式会社スクウェア・エニックス インキュベーションセンター ブロックチェーン・エンタテインメントディビジョン ディレクター
・茂木翔氏 : KDDI株式会社 法務部 弁護士
・北田友宏氏 : コインチェック株式会社 執行役員CLO 法務・コンプライアンス本部長

大手通信キャリアやゲーム事業者などがweb3ビジネスへの参入意向を示している一方で、既存の暗号資産交換業の規制が障壁となり、利用者に利便性の高いシームレスなUI/UXを提供することが困難な状況にある。また、海外事業者が提供するシームレスなUI/UXと比較しても現行の規制が国内事業者のサービス品質を低下させ、競争力にも影響を及ぼしていることを説明。マーケットプレイスとのAPI接続をシームレスに行うことで利用者にとって利便性の高い購入フローを実現することが求められ、他の金融サービスにおける代理業や仲介業の制度を参考に事例を解説した。最後に媒介ライセンスが導入されれば、暗号資産交換業者にとっても利用者が暗号資産に触れる機会が増え、成長につながるチャンスとなるため、今後も議論を重ね推進していく意気込みを述べた。

 

動画アーカイブは会員専用ページご確認いただけます。