【勉強会レポート】電子決済手段・暗号資産サービス仲介業の制度概要と実務上の要諦
改正資金決済法の施行を前に、JCBAでは電子決済手段・暗号資産サービス仲介業をテーマに勉強会を開催しました。制度創設の背景、登録申請、自主規制、金商法移管後を見据えた実務対応まで、専門家・事業者の視点からポイントをダイジェストで整理します。
【2夜連続】暗号資産の重要な制度に関する解説会①〜第1夜 電子決済手段・暗号資産サービス仲介業に係る制度の概説と実務上の要諦について〜
※こちらの勉強会は終了しております
新たな仲介業制度は、何を可能にするのか
2026年5月28日、JCBAは「【2夜連続】暗号資産の重要な制度に関する解説会①〜第1夜 電子決済手段・暗号資産サービス仲介業に係る制度の概説と実務上の要諦について〜」を開催しました。
今回のテーマである電子決済手段・暗号資産サービス仲介業は、暗号資産や電子決済手段の売買・交換について、「媒介のみ」を業として行うための新たな制度です。従来、ゲームアプリ、ウォレット、各種Webサービスなどが利用者に暗号資産交換業者等を紹介する場合、その関与の態様によっては資金決済法上の「媒介」に該当し、暗号資産交換業または電子決済手段等取引業の登録が必要となる可能性がありました。
一方で、売買等の当事者にならず、利用者財産の預託も受けない事業者に対して、交換業者等と同水準の規制を課すことは、事業実態に照らして過度な負担ではないかという課題もありました。そこで創設されたのが、仲介に特化した新たなライセンスです。
制度の大きな特徴は「所属制」です。仲介業者は、所属電子決済手段等取引業者または所属暗号資産交換業者のために仲介行為を行い、所属先から指導を受けます。また、所属先は仲介業者が顧客に与えた損害について賠償義務を負うこととされ、利用者保護を確保しながら、仲介業者側の参入負担を一定程度軽減する設計となっています。個人でも登録可能、財務要件なし、AML/CFT対応は主に所属先が担うといった点も、従来制度との大きな違いです。

登録申請で重要になる「ビジネスモデル」と「役割分担」
制度の施行後、登録申請・審査に先立って、まず当局への事前相談を行うことが想定されています。実務上のポイントは、事前相談が所属業者から所管の監督部局に対して行われること、所属業者が指定フォーマットに沿って仲介業者に代わり概要書を作成・提出し、ビジネスモデルを説明することです。
そのため、登録を検討する事業者にとっては、単に「ライセンスを取得したい」と考えるだけでは不十分です。どのサービス上で、どの画面遷移により、どのタイミングで利用者を交換業者等へ送客するのか。勧誘を行うのか、単なる紹介にとどまるのか。顧客情報、帳簿管理、不公正取引の監視、苦情対応、システムリスク管理を、所属先と仲介業者のどちらが担うのか。こうした点を、事前に具体化しておく必要があります。
当日のパネルセッションでも、所属業者と仲介業者の役割分担が重要論点として取り上げられました。もっとも、すべての管理を二重に行うことが求められているわけではありません。所属業者側に堅牢なシステムや管理態勢があり、仲介業者が必要に応じて参照・連携できる体制が整っていれば、一元的な管理も選択肢になり得ます。ビジネスモデルに応じて、実務上合理的な分担を設計することが、登録申請と事業運営の双方で鍵になるといえます。
金商法移管を見据えた対応と、媒介・勧誘の整理
今回の制度は、2025年改正資金決済法の下で創設されるものですが、同時に、暗号資産制度を金融商品取引法へ移管する議論も進んでいます。改正金商法・資金決済法案では、暗号資産交換業は「暗号資産取引業」として金商法上の金融商品取引業の一類型となり、暗号資産の仲介は金融商品仲介業の対象に加えられる方向です。
そのため、改正資金決済法に基づいて暗号資産仲介を行う事業者は、将来的に金商法下の金融商品仲介業への移行審査を受けることが想定されます。一方、電子決済手段の仲介については、名称変更を伴いつつも資金決済法下の制度として存続する見込みです。
登録を検討する事業者は、足元の制度対応だけでなく、金商法移管後の規制体系、外務員制度の有無、広告規制や帳簿管理、情報管理の実務まで見据えて準備する必要があります。
また、実務上避けて通れないのが、「媒介に該当するか」「勧誘行為に該当するか」という整理です。事務ガイドラインでは、媒介に該当する行為と、媒介に至らない行為の例が示されています。たとえば、自社サービスの画面上で暗号資産取引の機会を提供する場合でも、取引の相手方が暗号資産交換業者であること、説明等が当該交換業者により提供されることが明示され、事業者自身が独自に勧誘・推奨・説明・条件交渉を行わない場合には、媒介に至らない行為と評価される可能性があります。
一方で、積極的な勧誘や契約締結に向けた誘引を行う場合には、仲介業ライセンスの取得を前提に、適合性や広告表示、利用者説明などの実務対応が求められます。制度の射程を正しく理解し、自社のサービス設計を文書化することが、今後ますます重要になります。

自主規制規則とLPS論点─制度を実務に落とし込むために
後半では、自主規制規則等についても説明がありました。仲介業者自身にかかる法令上の義務を補完する規則・ガイドラインと、所属電子決済手段等取引業者または所属暗号資産交換業者が仲介業務を委託・監督する際の規則・ガイドラインが整備されることで、仲介業者と所属先の双方に求められる対応が整理されます。
暗号資産仲介行為に係る業務に関する規則・ガイドラインでは、経営管理、法令等遵守、広告、禁止行為、名義貸しの禁止、商号等の明示、利用者への情報提供、金銭等の預託禁止、帳簿書類の作成・保存、利用者情報管理、苦情等処理態勢、システムリスク管理、情報セキュリティ管理、サイバーセキュリティ管理など、多岐にわたる項目が示されています。
重要なのは、これらが一律・画一的な対応を求めるだけのものではなく、仲介業者の業務内容、規模、特性に応じた個別具体的な体制整備を前提としている点です。登録申請を検討する事業者にとって、自主規制規則は、必要な体制や社内規程、所属先との契約・管理関係を確認するための実務上のチェックリストにもなり得ます。
また、LPS(投資事業有限責任組合)におけるGP(無限責任組合員)の暗号資産交換業該当性についても、直近の確認事項が共有されました。LPSが暗号資産を取得・保有する場合に、GPがLPSのために暗号資産の売買・交換を行うことは、基本的には暗号資産交換業に該当しないとの解釈が示されました。
一方で、GPがアンホステッドウォレット等で運用財産に属する暗号資産を自ら管理する行為は、LPのために暗号資産を管理するものとして暗号資産交換業に該当し得るため、暗号資産交換業者等への管理委託が必要とされています。制度対応と事業開発の接点にある重要論点として、今後も継続的な情報共有が求められます。

まとめ
電子決済手段・暗号資産サービス仲介業の創設は、暗号資産・電子決済手段に関わる事業者にとって、規制の不確実性を下げ、より明確なルールの下でサービス開発やマーケティングに取り組むための重要な一歩です。
一方で、登録申請、所属先との役割分担、媒介・勧誘該当性の整理、自主規制規則への対応、金商法移管を見据えた準備など、実務上検討すべき事項は多岐にわたります。制度を正しく理解し、最新の当局動向や業界内の議論を踏まえて対応することが、今後の事業展開において不可欠です。
JCBAでは、法制度、実務対応、事業開発の交差点にあるテーマについて、会員様向け勉強会やタスクフォース活動を通じて継続的に情報共有を行っています。暗号資産・Web3ビジネスに関わる事業者の皆様にとって、制度変化を先取りし、実務に落とし込むための場として、ぜひJCBAの活動をご活用ください。