『FATF勧告対応法案に係る犯収法令の改正(暗号資産交換業関係)の概要と同改正がトラベルルール関連自主規制規則に及ぼす影響』
『高速化とグローバル化を見据えたPolygonの利活用』

カリキュラム及び概要

  • 日時:2023年3月2日(木) 17:00〜19:00
  • 場所:オンライン配信
  • 第一部(講演) 17:00〜18:00 : 『FATF勧告対応法案に係る犯収法令の改正(暗号資産交換業関係)の概要と同改正がトラベルルール関連自主規制規則に及ぼす影響
    (講演概要)
    トラベルルール導入に関連する犯収法令の改正部分の概要と法令解釈上問題となりうるいくつかの論点を紹介するとともに、同改正法令の施行に伴いトラベルルール関連自主規制規則の内容がどのような影響を受けるかについても検討し、同改正法令施行後のトラベルルール関連規制の全体像を明らかにすることを試みます。

    第二部(パネル) 18:00〜19:00 : 『高速化とグローバル化を見据えたPolygonの利活用
    (講演概要)
    Ethereum のレイヤー2 チェーンとして高速かつ安価に利用できる Polygon は現在ゲームや NFTなど様々な領域で使用されています。Polygon は高度に発達した独自のエコシステムとzkEVM を始めとした高い技術力の双方で他のチェーンとは一線を画しています。
    今回は最新のPolygon のユースケースや技術面・ビジネス面における将来的な利活用について掘り下げていきます。また、現在ホットになっているドバイ・アブダビにおけるクリプトビジネスの最前線についても解説します。

    ■ 講演者
    第一部
    後藤 出氏 : シティユーワ法律事務所 弁護士

     
    第二部
    田原 弘貴氏 :
    Turingum株式会社 取締役CTO
    株式会社クシム 取締役CTO

 

第一部 :
『FATF勧告対応法案に係る犯収法令の改正(暗号資産交換業関係)の概要と同改正がトラベルルール関連自主規制規則に及ぼす影響』

後藤 出氏 : シティユーワ法律事務所 弁護士
 

(後藤)
 弁護士の後藤出と申します。法律顧問を務めていた日本暗号資産取引業協会(JVCEA)は2023年2月末をもって離れており、本日はJVCEAの立場ではなく一弁護士として、これまでトラベルルール関連に対応してきた経験も踏まえ、その内容の説明と問題提起をします。

 犯収法の改正の概要は若干入り組んでいるため、本日の講演ではまずその部分について説明をします。第I章では、どのようなFATF勧告に対応しているものなのかという話をします。本題は第Ⅱ章となり、今回の犯収法法令改正における三つの主要改正事項について概要と論点を説明します。第Ⅲ章では、改正犯収法令の施行に伴い、今ある自主規制規則にも大きな影響が及ぶことを受け、特に留意すべき点等について5点ほどピックアップして紹介します。以上が本講演の骨子です。

 第I章、『FATF勧告対応法に係る犯収法令の改正(暗号資産交換業関係)の概要と関連FATF勧告』の説明に入ります。2022年6月には主にステーブルコインの扱いに関わるところで、改正資金決済法による犯収法の改正が行われ、その後、今度はFATF勧告対応法に係る犯収法の改正が行われました。本日は、暗号資産交換業者に関連の深い後者のFATF勧告対応法に係る犯収法の改正について触れます。
 FATF勧告対応に係る犯収法の改正は、以下、『改正犯収法』と略します。法律レベルでの主要な改正事項は、まず、トラベルルールの新設です。改正犯収法の第10条の5で新設されました。次に、外国業者と暗号資産の移転に係る提携契約を締結する際の確認義務が第10条の4で新設されました。施行時期は公布の日から起算して9カ月を超えない範囲で政令で定める日となり、本日3月2日時点では未施行となります。

 政令内閣府令に関する部分として、改正資金決済法による犯収法の改正と、FATF勧告対応法による犯収法の一部改正を併せて対応する政令、また施行規則の改正案が2023年2日3日に公表され、現在、3月5日を期限としてパブリックコメントに付されている状況です。
 犯収法施行令の一部改正案はトラベルルールの除外事由を金融庁・財務省告示で定めています。犯収法施行規則の一部改正案の主要な改正事項としては、最初に、トラベルルールに関連する事項を施行規則で定めています。また、提携契約関連事項と書いていますが、改正法で新設された提携契約時に確認すべき義務に関する事項を整備しています。2番目に、提携契約に基づく移転についての取引時に確認を的確に行うための措置があります。前者は提携契約時の確認事項、後者は提携移転取引を行う際に必要な措置となります。これらは施行規則のほうで新たに定められています。本日はこの二つを併せて『提携契約関連事項』と呼びます・・・

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 4、『受取人による受取人情報正確性確認義務』も犯収法令、トラベルルールには含まれていない義務ですが、FATF基準の中で求められています。トラベルルールで通知を受けた受取側VASPは、受取人情報について、その正確性を確認しなければならないという義務がFATFガイダンスの中で定められています。そちらを受けて、自主規制規則の第6条第10項では、『正確性を確認の上、通知を受けた当該必須情報を保存しなければならない』という内容の規定を設けています。こちらも、自主規制規則付則の経過規定で、改正犯収法の施行までは体制整備の努力義務とされていますが、そちらが外れるため、施行後は義務となります。どのような形でその正確性を確認していくかという点が課題となります。

 最後に、項目5、『送付時における事前スクリーニングの義務』があります。正確に述べると、外国為替及び外国貿易法に関連する部分です。自主規制規則の中では第6条第12項で、アンホステッド・ウォレット向けに移転する場合には、リスクを評価して送付しなければならず、当該リスクに応じ送付拒絶を含む適切な対応を行うものとすると定められています。この第6条第12項は事前スクリーニングの要素も含んでいる規定と言えます。こちらも経過規定であり、現在は努力義務ですが、改正犯収法の施行に伴い義務となります。送付する側の事前スクリーニングに関する規定であり、目的は、いわゆるサンクションスクリーニング、制裁対応となります。外為法の第14条の4に基づき求められる資産凍結措置等に係る確認義務として、今後、外為法でどのような措置が求められるのかということを踏まえながら、具体的な事前スクリーニングの方法を検討する必要があります。現在の自主規制規則の文言のみでは、こちらのスクリーニングの内容は確定することはできません。今後に決まっていく問題ではないかと考えています。

 最も難しいのは、受取時における事前スクリーニングであり、自主規制規則の中では定められていませんが、改正外為法の適法性確認の義務として、送付時のみではなく受取時においても制裁対象者からの送付に関してスクリーニングをしなければいけないとされています。スクリーニングをする場合には、それが怪しい主体からの暗号資産であれば、顧客に口座反映をさせない、あるいは利用させない等の措置を取らなければならないことが最終的に求められる可能性が非常に高いと考えられます。そのような措置の実現に向けての検討が大きな課題でしょう。
 以上、犯収法改正に関して主要な論点等について述べてきました。私の講演は以上となります。

 

 

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第二部 :
『高速化とグローバル化を見据えたPolygonの利活用』


田原 弘貴氏 :
Turingum株式会社 取締役CTO
株式会社クシム 取締役CTO

 

(田原)
 Turingum株式会社の田原と申します。Twitter等では『なまはげ@_namahagesan』というネームで活動しています。2017年の頭、大学生だった頃からクリプトの世界に入り、Turingumは『カナゴールド』と呼ばれる橋本欣典さんや『うどんちゃん』といった仲間と2019年6月7日に設立しました。私はエンジニアおよびリサーチャーとして参画しています。現在、Turingumは上場会社である株式会社クシムに買収され、私自身はクシムの取締役CTOも兼任しています。『ビットコイナー反省会』というブロックチェーンを扱うYouTubeチャンネルによく出演してクリプトについてトークしています。
 
私はPolygonJapanの人間ではなく、事業者としてPolygonを使う立場です。本日は、そのような外からの観点からPolygonがL1やL2チェーンと何が異なるのか、事業者視点での技術活用や、将来性についてお話しできればと思います。

 Polygonとは何かという話から入ります。Polygonは、Ethereumのスケーリングソリューションとして、手数料問題や処理能力の遅さ等を解決するための手段を提供するプロジェクトであり、Ethereumにコミットメントするという立ち位置です。Polygonはビジネス面で非常に巧みな立ち回りをしており、ビジネスで得た資金を惜しみなく投資して技術的発展を遂げることにより、さらにビジネス面での成功を積み重ねていくという好循環を生んでいます。このような取り組みをEthereumのスケーリングソリューションとして展開することで、L1チェーンのSolanaのようにEthereumと敵対するわけではないが、ArbitrumやOptimismのようにEthereumにべったりくっついているわけでもないという独特のポジショニングが実現されているのでしょう。

 Polygonの三つの強みを紹介します。一つ目はEthereumとの親和性と運用実績、二つ目はエコシステムの独自性、最後に、ゼロ知識証明を使ったZK-Rollupによるセキュリティーの強化が挙げられます。
 運用実績を見てみましょう。PolygonはEthereumVirtualMachine、略称EVMを活用しており、Ethereumで作ったプロダクト、コントラクトはそのままPolygonに転用が可能です。EVMチェーンやEVMネットワークといわれるものは、BinanceSmartChain、略称BSCや、Arbitrum等、Polygon以外にも数多く存在します。その中でも、Polygonは大量のトランザクションを日々処理しており、極めて信頼性の高いチェーンと言えます。これはチェーンを選定するうえで重要です。バブルの際はPolygonよりBSC等のトランザクション数が多くなっていたのですが、バブルがはじけるとBSCは大きな影響を受けトランザクション数が大きく落ちました。対してPolygonは安定して1日当たり約300万から400万件のトランザクションを処理しています。他に有名なチェーンでも総Tx数が350万件といった場合があります。この運用実績の高さは極めて重要なポイントです。

 コミュニティーの成長について見てみます。コントラクトを作っている人が23.4万人います。EthereumのエンジニアがPolygonに流れてくる機会も数多くあり、アドレスやスマートコントラクトの件数も増加していっています。Ethereumの技術スタックをそのまま流用できる強みを十分に生かしているからこそだと捉えています・・・

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 一方、利用すべきではないプロジェクトについても考えてみました。ユーザーが100万円や200万円等、大きな金額を運用することが想定されるプロジェクトでは、Ethereum等の資産流動性の高いチェーンのほうがよいかもしれません。資産価値を大きく伸ばしたいアセットがある場合、DEX、DeFi周りではEthereumやBSCに軍配が上がる部分もあります。Polygonの資産流動性の低さは少しネックになってくる可能性はあるものの、NFT周りの充実度や手数料の安さなど、先ほど挙げたさまざまなメリットには極めて大きい強みがあります。当社でも、資産価値を伸ばしたいアセットはEthereumで運用する一方、少額の取引はPolygonで行うなど、EthereumとPolygonを組み合わせ、マルチチェーンの使用を意識することで、良いシナジーが生まれるようにしています。マルチチェーン対応は同じEVMであるため簡単にできる面もあり、われわれも意識しながらPolygonを使っています。
 プロジェクトを立ち上げる上では、Polygonにおけるこれらの利点は本当に見逃せないものです。特に、今後の事業展開を検討中の方はチェーンの安定性を重視しながら取り組むことをお勧めします。

 最後に余談です。現在、私はUAEのドバイに居住しています。UAEでは国を挙げてWeb3ビジネスの積極的な支援を行っており、ドバイではクリプトフリーゾーンの設定などが行われ、圧倒的にクリプトビジネスとの親和性が高く、非常に意義のある仕事を行うことが可能です。ドバイのみならずアブダビでも急速に支援を拡大しており、直近で3000億円規模の支援も発表されました。グローバルにクリプトプロジェクトも集まりつつあり、同じビルでも同業者に出会います。特に、シンガポールの賭博規制の影響で、GameFi等のプロジェクトがドバイ、アブダビに移ってきています。クリプト規制についても、ライセンスやコンプライアンス要件を定めた上でビジネスを支援するスタンスで整ってきており、事業者としても極めて良い環境になってきていると言えます。
 ドバイにおけるクリプトに適したフリーゾーンでは、都市ごとにルールが設定されており、そのルールの下、規制当局とコミュニケーションを図って進めていくことが重要となります。規制当局とコミュニケートする上では、日本にいても始まらないため、Turingumの一部メンバーはドバイに移住して、GameFiのパブリッシング支援に取り組んでいます。非常に活気のあるドバイが気になる方はぜひ当社に問い合わせください。皆さんとともに取り組んでいければ幸いです。
 私の講演は以上となります。ご清聴ありがとうございました。

 

 

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