『CeFi(中央集権型金融)から見た DeFi(分散型金融)-革新性と課題』
カリキュラム及び概要
- 日時:2020年10月29日(木) 17:00〜19:00
- 場所:オンライン配信
- 「CeFi(中央集権型金融)から見た DeFi(分散型金融)-革新性と課題」
金光 碧氏
株式会社 bitFlyer Blockchain 取締役 / 株式会社 bitFlyer トレジャリー部長 - 講演内容
1.DeFi との出会いと Compound の紹介
2.DeFi の定義、各種 DeFi の紹介
3.CeFi とDeFi
4.DeFi と日本法
5.暗号資産取引所とDeFi
6.DeFi の技術的課題
7.DeFi と金融規制(特に AMLCFT)
「CeFi(中央集権型金融)から見た DeFi(分散型金融)-革新性と課題」
金光 碧氏
株式会社 bitFlyer Blockchain 取締役 / 株式会社 bitFlyer トレジャリー部長
今日はお時間いただきましてありがとうございます。
私は、いわゆる日本の暗号資産取引所の株式会社bitFlyer で働いていて、業務上の必要に迫られてDeFi(Decentralized Finance:分散型金融)について調べています。また、株式会社 bitFlyer Blockchain にも所属していますので、DeFi を技術的な観点でも見ております。DeFi の事業者の人間でも法律家でも、どこの専門家でもありませんが、幅広くDeFi について調べていますので、それをご紹介して色々な論点をお話しできればと思います。
~1. DeFi との出会いとCompound の紹介~
最初に自己紹介です。今、ご紹介いただきましたとおり、私は、新卒から10年間、外資系証券会社の投資銀行部門の資本市場本部という所で、デリバティブの担当者として働いていました。その中で2015年にビットコインを知りまして、知り合いだった加納裕三さんの会社に応募して、2016年からbitFlyerで働いています。当時の暗号資産・ビットコインは、規制も法律も何が当てはまるのか定かでないような状態でした。そこから2017年に暗号資産交換業登録を行いました。残念ながら当社は2018年に業務改善命令を受けたので、その後の体制整備もしてきています。今、交換業のbitFlyerではトレジャリー部長という立場で、分別管理・ウォレット管理・自己資本規制比率管理・在庫ポジション/リスク管理・資金管理の業務に務めています。自己資本規制比率の観点で、ホットウォレットで管理する暗号資産は、自己資本規制比率上のリスクにそのまま100%で乗ってくることになるので、これを小さい金額にする必要があります。そのため、暗号資産の移動をする担当業務の中で、次のページにあります困った点がありDeFiを調べ始めました。
DeFiについて詳しい人はTwitter上に多くいらっしゃいます。例えば、信玄さんやKyber Networkのhoryさん、MakerDAOのKathleen Chuさんがいらっしゃいます。今日いらっしゃる鈴木雄大さんもとてもお詳しいです。日々新しい情報が出てくるので、最新情報は是非、今申し上げた方々のTwitter等をフォローいただければと思います・・・
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~2.DeFiの定義、各種DeFiの紹介~
次にDeFiの定義についてお話をします。こちらの資料は、先日、金融庁総合政策局フィンテック室の課長補佐であり、ジョージタウン大学シニアフェローでもいらっしゃる、牛田遼介さんのご発表を聞くことがあって、一部使わせていただいています。実は、「DeFi」にはあまり明確な定義はありません。ただ、ここでは、主にイーサリアムなどのスマートコントラクト上で稼働する分散型金融システム、アプリケーションとしてお話をします。先日、牛田さんのお話を聞いた中では、金融安定理事会(FSB)では、分散金融技術は「金融サービス提供における一つ以上の仲介者や中央集権化されたプロセスの必要性を低減または排除する可能性のある技術」として注目をされているようです。一般的には、ここにあるように分散型金融システムの一部を構成するアプリケーションのような定義がされてるのかなと思ってます。下にある、銀行からビットコインまで、中央集権型から分散型まで様々な濃度でありますけれども、基本的には、スマートコントラクトで金融機能が成立しているものをDeFiと呼ぶと思っています。ですので、この中でいうと、後でご説明しますが、bitFlyerとBlockFiは恐らくDeFiではなく、dYdX、Uniswap、CompoundがDeFiで、ビットコインはDeFiなのかもしれないけれど、暗号資産という定義されてる、ということかなと思っています。
DeFiの基となっているブロックチェーン技術のおさらいです。聞いていらっしゃる方はご存じなのかもしれませんが、技術としては、「ハッシュチェーン」「電子署名」「コンセンサスアルゴリズム」の3つを組み合わせた技術です。「ハッシュチェーン」は一つ手前のブロックの情報からハッシュ関数を用いてランダムな文字列、ハッシュを作成して、次のブロックのブロックヘッダーに入れます。「電子署名」は送信者が取引記録を作成し、秘密鍵でトランザクションに署名します。他者は送信者の公開鍵で署名の検証が可能です。「コンセンサスアルゴリズム」は複数のノード間で取引の正当性を検証して、永続化への合意をする。これらでP2P取引を実現していくのがブロックチェーンを構成する技術的な要素になっています・・・
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~3. CeFi とDeFi~
では、今どの程度お金が集まっているのか、今の市場規模をお話をさせていただきます。DeFiの市場規模は、この『TotalValueLockedinDeFi』という左側のチャートで見ていただくことができます。今、1.2兆円程度になっています。やはり6月の後半頃から非常に資金流入しているのが見ていただけると思います。足元、少しへこんでいるのは、HarvestFinanceで資金の不正流出があったのも影響して少し落ちています。暗号資産全体はどうかといいますと、直近、昨日下がりましたが、今大体41兆円程です。そのうちビットコインが26兆円程です。ですので、DeFiにロックされている金額は全体の3%程度です。ただ、これを見ていただくと、非常に増えてきて勢いは確かにあるのが今の状況です。
それ以上に、衝撃と共に語られるのが、こちらのDEX(分散型取引所)の取引高推移です。こちらはHashhubのレポートから抜粋したものです。2020年の8月と9月の主要な取引所の出来高を示しております。一番上がOKExで、次にUniswapになっています。これは9月の出来高順に並んでます。8月は非常にボラティリティーが高い市場だったので、当社もそうですけれども、8月から9月にかけては、どこの中央集権取引所も出来高は大体6割ほどです。対して、Uniswapは4倍に増えています。Uniswapが飛び抜けてますが、CurveやBalancerも非常に増えています。確かにこれだけを見ていると先ほどの全体の3%なのですが、この暗号資産を持っている方の中には、持っているだけでトレードされない方もいらっしゃいます。ですので、3%というのが非常に取引される方だとすると「もう中央集権取引所はいらないのではないか?」という声が出てくるのも理解できる状況だと思っています・・・
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最後のスライドです。これも、金融庁総合政策局フィンテック室の課長補佐であり、ジョージタウン大学シニアフェローである牛田さんの発表資料に基づくスライドです。分散型金融というのは、色々な利点があります。可用性、金融取引における不確実性の低減、仲介業者への依存度の低減、分散されていますのでサイバーリスクに対しても強い点、色々な金融サービスが作れる点、そして何よりも透明性が担保されている点、マイクロペイメントも金融包摂にもつながっていく概念かなと思います。Compound等を使ってみると、これが本当にプログラムだけで動いてるのはすごいと思いますので、こういった観点での期待であったり、意義であったりが大きいのだろうと思います。
一方で、誰が法的責任を持ってるのか分からない点や、AMLの概念がない点、消費者保護の観点では多くの人はプログラム読めませんので、今、一般の金融機関が持っているお客さまと対峙する機能が全部なくなってしまっていいのかというと、必ずしもそうではないと思います。これらの点は大きな課題と思います。
この中で牛田さんが、分散型技術のポテンシャルを最大限生かすためには、正しいリスク認識の下で、リスク低減を講じる必要があるのではないかということをおっしゃっていました。これは本当に素晴らしい技術ですし、ビットコインに初めて出会ったときと同じぐらい、すごい可能性を感じる動きだと思うので、うまく進んでいけばいいと思っております。
広く浅くな感じでしたけれども、本日はありがとうございました。こちらにお顔が出ています信玄さん、horyさん、平野さん、カナゴールドさん、斎藤先生には、いつも分からないことがあると聞いて教えていただいておりまして、大変感謝しております。皆さまもぜひこの方々の発信等をフォローしていただければと思います。私からは以上です。ありがとうございました。
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