『マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策をめぐる国際動向及び我が国の対応』
『日本におけるステーブルコインの制度設計の在り方について』
カリキュラム及び概要
- 日時:2021年9月29日(水) 17:00〜19:00
- 場所:オンライン配信
- 第一部(講演) 17:00〜18:80 : 『『マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策をめぐる国際動向及び我が国の対応』
第二部 18:00〜19:00 : 『日本におけるステーブルコインの制度設計の在り方について』
■ 講演者
第一部(講演)
尾崎 寛氏
金融庁 総合政策局 リスク分析総括課
マネーローンダリング・テロ資金供与対策企画室長
第二部
白石 陽介氏:株式会社ARIGATOBANK 代表取締役 CEO/株式会社HashPort 社外取締役/東京都DX フェロー
安達 知可良氏:EY新日有限責任監査法人 金融事業部 アシュアランスイノベーション本部 アソシエートパートナー
吉田 世博氏:株式会社HashPort 代表取締役
河合 健氏:アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 パートナー
佐野 史明氏:片岡総合法律事務所 弁護士
『マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策をめぐる国際動向及び我が国の対応』
尾崎 寛氏
金融庁 総合政策局 リスク分析総括課
マネーローンダリング・テロ資金供与対策企画室長
1部については、2021年内中、会員のみに開示いたします。
講演資料・議事録全文・動画アーカイブは会員専用ページご確認いただけます。
『日本におけるステーブルコインの制度設計の在り方について』
白石 陽介氏:株式会社ARIGATOBANK 代表取締役 CEO/株式会社HashPort 社外取締役/東京都DX フェロー
安達 知可良氏:EY新日有限責任監査法人 金融事業部 アシュアランスイノベーション本部 アソシエートパートナー
吉田 世博氏:株式会社HashPort 代表取締役
河合 健氏:アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 パートナー
佐野 史明氏:片岡総合法律事務所 弁護士
(司会)
第2部は、『日本におけるステーブルコインの制度設計の在り方について』です。昨日の部会で議論しましたが、部会より、ステーブルコイン部会長の白石様、副部会長の安達様、幹事の吉田様、顧問弁護士である河合先生と佐野先生に参加いただきます。まずは白石様から解説いただきます。
(白石)
白石です。よろしくお願いします。当JCBAのステーブルコイン部会は、現状、国内でステーブルコインを扱うことは整理上難しいという課題があると認識しています。当部会では、ステーブルコインを扱うための整理について検討してきました。
内容は、前提のアプローチ、現行法上の整理、つまりステーブルコインの現行法での扱い、扱う際の現行法上の課題、扱い得るための制度設計についての提言という章立てです。
暗号資産交換業がステーブルコインを扱うことができないのは、ステーブルコインが暗号資産ではないと考えられているからです。暗号資産とは、不特定の者に対して代価の弁済に使用でき、かつ不特定の者を相手に法定通貨と相互に交換できる、また電子的に記録されて移転できる、また法定通貨または通貨建て資産ではないとされています。要件は、通貨建資産ではないこと、不特定の者の間で流通されるものであることです。
次は事務ガイドラインの記載です。この暗号資産の該当性に関しては、『「代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができる」ことを判断するに当たり、例えば、「ブロックチェーン等のネットワークを通じて不特定の者の間で移転可能な仕組みを有しているか」、「発行者と店舗等の間の契約等により、代価の弁済のために暗号資産を使用可能な店舗が限定されていないか」』という記述があります。
また不特定の者を相手方として、購入および売却ができることを判断するにあたっては、ブロックチェーン等のネットワークを通じて不特定の者の間で移転可能か、発行者の制限なく本邦通貨、わが国の場合の日本円または、外国通貨との交換を行うことができるかが暗号資産の該当性の論点になると認識しています。
このように、通貨建資産ではなく、かつ前項で話をした要件を満たすものが暗号資産でです。この発行者による特段の制限なく、ブロックチェーン等を通じて不特定の者に移転可能な仕組みを有しているかという部分が鍵です。
このような整理は、不特定の者の間で転々流通するという前提つまりパブリックチェーンと呼ばれるものを、電子マネーなどの通常の通貨建て資産でクローズドなものと比較すると、マネーロンダリングやテロ資金供与へのリスクが高まるのではないかという観点があります。流通者とは、国内では暗号資産取引所であるケースが一般的ですが、流通者によって、利用者の利益が害される可能性があるために、流通者に対する規制が必要です。それで、暗号資産交換業はライセンス制であり、規制が設けられています・・・
・・・
(佐野)
ここからは片岡総合の佐野がご説明します。
これまでの電子マネーとの最大の違いは、ブロックチェーン技術により、いろいろな人やいろいろな所に送れることです。これにより、決済手段として広く使われる可能性が出てきます。既存のサーバー型の電子マネー等とはここが違います。
ブロックチェーン技術の使用による帰結かもしれませんが、別の大きな違いは、ステーブルコインの発行体と、流通事業者が分離していることです。そのような違いこそが現行法の課題だと思います。
この総論を前提にした上で、払戻約束型のステーブルコインについての法的な課題を話します。払戻約束型ステーブルコインを金融規制法に当てはめた場合に有する機能について言えば、一般的には、払い戻しと発行を通じて、金銭の受け入れと資金の移動を行うので、業法上は預金の受け入れや為替取引に該当する可能性があります。
既存の金融システムと違うのは、ブロックチェーンを使っていろいろな所に転々流通するので、発行者に対して、既存の金融規制を入れるべきか、それとも新しい参入要件を認めるべきなかという課題が生じます。これは本日の課題でもあります。第一部で尾崎様からいただいたOpportunityとChallengeはトレードオフ的な関係にあるという話のように、既存の金融サービスと比較した場合にマネロンリスクが高まるという問題意識があります。
不特定のいろいろな所で使えるという特長を持つため、サービス利用ができなくなった場合の影響が大きいということもあります。それで、どのような参入要件を課すべきかという観点もあります・・・
・・・
(堀)
大変よく分かりました。二つ質問があります。あるべき制度設計と提言のまとめを見ると、現在の資金移動業や銀行業の中では収まりきらない部分があるので、別途の規制の枠組みを提言する方向性には賛成です。佐野先生のお話の中で、銀行法の例外としてという話がありました。また、預金か為替かを判断せずに、ステーブルコイン発行業を行うことで、為替の100万円規制にかからないなどのメリットもあります。一方で、預金か為替かの区分の必要性がないという立場に立つと、利息を付けることの可否という問題もあり、銀行界の猛烈な反対が懸念されます。ステーブルコインの性質決定をどこまで行うのかについての議論の過程があれば、教えてください。これが一つ目です。
次に二つ目です。発行業のライセンス制は日本国内の発行したい事業者にはいいと思いますが、取引所のニーズとして外国発行のものをもっていきたいということもあると思います。例えば、USDCやUSDTなどを日本のウォレットの中にもラインアップしたいというニーズがあります。その場合、ライセンス制を敷くと外国発行のものの扱いはどうなりますか。日本での発行業の登録を求めた場合、例によって日本だけがガラパゴスになりかねません。暗号資産発行にはライセンスが要らないこととどのようにつじつまを合わせるかが気になりました。そこも教えてください・・・
・・・
(河合)
現実問題として、その辺りの難しいことはスキップしています。一つ目の付利は確かに難しいと思います。これは預金的な性格を持つというより、決済や送金に使うものだと考えています。ですから、為替寄りの100万円規制の話になり、そこについては二つあります。発行業にもライセンスを求めます。登録制ではなく、認可や許可で、第1種資金移動業的なレベル感のライセンスになると思います。確保については、例えば、信託を保全する、また売買業やカストディ業においては、コインの安全管理のところに暗号資産交換業者と同レベルで手当てをしていくことがよいと思います。従来型の縦割り、横割りという話や機能別という話も出てくると思いますが、今までの機能の中にはない業態が既に出現しているので、これまでの縦割りの銀行業界という発想から脱却しなければ難しいと感じているところです。
海外については議論が分かれるところです。海外のCircleでは、トラストカンパニーを使っており、ニューヨークでライセンスを受けています。日本でいう信託業というよりも、トラストカンパニーで行うカストディ業、つまり日本でいう信託業でない形のカストディをトラストカンパニーの名前の下で行っていると理解しています。ニューヨークDFSなどで監督されています。USDTは少し違います。そのようなものには、業を求めない、または、外国信託会社のような形で認めるという方向性もあるとは思います。暗号資産交換業の場合には不要であることとの整合性の取り方についてですが、人々が暗号資産交換業でも価値が安定していると信じてしまう場合は、暗号資産は価値が変動しても当然であるという概念整理ができますが、ステーブルコインはそうではないと人々が思うというところで、レベルをアップして、海外業者にも求めるべきかについては、さらに議論が必要だと思います・・・
・・・
(安達)
発行業者については、発行体のリスク管理が非常に重要なので、そのガバナンスが問題です。法規制だけでなく、業者のガバナンス体制も非常に重要だということが議論に上がっていました。以上です。
(吉田)
ステーブルコインの普及は暗号資産マーケットの成長にとって不可欠です。ノンファンジブル・トークン、DeFi、その他の現在非注目されているサービスは、諸外国では、このようなステーブルコインの基盤上で成立していると思っています。今回の議論を通して、規制をかけていくという視点ではなく、現在曖昧な状態なものをいかにクリアにして普及させていくかという視点で進めたいと思っています。この議論には皆さまの意見を広く取り入れていきたいと思っています。以上です。
・・・
(幸)
金融庁の皆さま、ステーブルコイン部会の皆さま、ありがとうございました。本日は登録者が164名で140名近くに視聴いただきました。金融庁の尾崎様にご講演いただいたFATFの対応については、皆さんの参考になったと思います。ステーブルコイン部会は、ここに登壇したメンバーとそれ以外のメンバーで、1年以上毎週ミーティングを行ってきました。この発表に対して2、3日前から、弁護士の方を中心に多くの意見がありました。先ほどの堀先生のご意見にもあったように、まだ検討中です。日本にはステーブルコインに関する明確な基準がないので、その先駆けとしていろいろなことを行っています。その辺りはご理解ください。さらに皆さんの意見を賜って検討し、当協会から公表したいと思います。本日は、ありがとうございました。
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