『デリバティブ規制に関する提言書について』
『仮想通貨に関する規制動向』
『ブロックチェーンの相互運用プロジェクトの未来』
カリキュラム及び概要
- 日時:2019年9月30日(月) 16時45分~19時25分
- 場所:CONFERENCE BRANCH 銀座 銀座オーミビル 3F 会議室A+B
- 第一部 『デリバティブ規制に関する提言書について』
シンプレクス株式会社 金融フロンティア ディビジョン エグゼクティブプリンシパル/JCBA デリバティブ部会 副部会長 尾関 高氏
アンダーソン・毛利・友常法律事務所 河合 健氏 - 第二部 『仮想通貨に関する規制動向』
日本仮想通貨交換業協会 事務局長 福井 崇人氏 - 第三部 『ブロックチェーンの相互運用プロジェクトの未来』
株式会社LCNEM 代表取締役 木村 優氏
『デリバティブ規制に関する提言書について』
シンプレクス株式会社 金融フロンティア ディビジョン エグゼクティブプリンシパル/JCBA デリバティブ部会 副部会長 尾関 高氏
アンダーソン・毛利・友常法律事務所 河合 健氏
提言書の内容の詳細は、下記(PDF)をご覧ください。
(尾関氏)
ペーパーの方でご承知のとおり、提言書の内容を3点に絞らせていただいていてお話させていただきます。これしかないというわけではなく、時間等の制約の都合上、三つに絞らせていただいています。1 点目が、簡単に言ってしまえば、板取引というものが果たして、公設市場に該当するのかという点において、そうではないというスタンスで話がされています。そもそも登録しなければならない条件というのは一体何なのかというところで、いろいろと議論、意見等が出ております。個人的な意見とお断りしますが、こうであるという決着がついているとは感じていません。提言書の中でこまごまと、これはどうだ、あれはどうだ、こういう定義はどうなんだという意見は多く出ておりますが、本日45分しかトータルないので、これだあれだということはあまり説明するのはどうかという気もします。三つ論点があるので、できれば内容的には、一つ目を20分ぐらい、二つ目が10分ぐらい、残り15分ぐらいという具合で考えております。なので、なるべく 5、6分でお話をかいつまんでさせていただいて、あとはご意見ご質問等あればという形にできればと考えます。
とりあえず、1番目のオーダーブック方式での取引の場合、金融市場とすることの弊害という形で、アプローチとしてはそもそも定義とは何なんだという形式論に始まって、実質的にこれを今、板取引をやってらっしゃる業者さんもいれば、ツーウェイクォートという形で、相対取引としてやってらっしゃるお客さまもいるわけですけれども、その中から板取引というモデルを排除した場合に起きる弊害は、いろいろありますという説明をしております。
例えて言えば、板方式によるメリットはまず、カバー先が理論的には不要になることです。カバー 先を持てば、取引先リスクの計算が自己資本規制比率において必要になります。あるいは FXのように、いくらでもAクラスの格付けのある銀行が、カウンターパートとして存在しているわけでもありません。インターバンクに相当するような、透明で公正性が保たれている上流の市場があるわけでもあり ません。そういった状況であくまでもこの商品、いわゆる仮想通貨の相場はまだまだ生まれて間もなく、価格を発見する必要性がある環境に鑑み、まだ板取引を行い、これによって価格を発見し、公正 なる市場を追求していく段階ではないかというのが、一つの意見として出ております。間違っていたらご訂正お願いします。他にメインなポイントとして、河合先生の方から何かあればお願い致します。
(河合氏)
今回の問題は、要するに、世界中でデリバティブ取引というか、いわゆるCFD形式の証拠金取引です。これは板形式で行われることが多いですけれども、当局のご意向として、板取引は金融商品市場、株式市場と同じ、東証と同じような市場に当たる可能性があるというお話があります。そうすると当然ながら免許制になってくるので、もうできませんねとなります。そうするとFXで今されているような、ツーウェイプライス方式というか、自分が間に立って必ず自己玉をぶつけますという取引にするのかどうか、そうした場合、それが本当にいいのかどうかという話をしたということで、今の尾関さんからの説明になっております。
要するにFXと違って、巨大なスポット市場があるわけではない中で、ツーウェイプライスで出すことによって、むしろ価格の透明性が低まってしまうこととか、先ほど尾関さんの方からありましたように、必ずツーウェイ方式だとカバー取らなくてはいけないので、じゃあ誰と相対でカバー取るのですかと、そこの人の信用リスクはどう考えるのですかという問題があります。ということで、板イコール金融商品市場であり、よって市場デリバティブになってしまうという話でもないのではないか、というのがわれわれのご説明をした内容です。
(尾関氏)
ありがとうございます。具体的には板取引、もしくはそれに準ずるものでありながら、店頭、相対であるといわれているものは、いくらでもOTCのマーケットにはございます。ETB等、あるいは最近は銀行も、エージェントモデルと称して、いろんな流動性を1カ所に集めて板で表示して取引してもらう、そういったものは沢山出ております。また金商法上では、どういう仕組みであるかについては、相手方が個人であるか、法人であるかに問わずなので、基本的には現実的に約定の方法にどちらであるかという定義を求めるというのは、合理的ではない、という考え方に立っております。これについて現状、当局からそうだこうだとかいう意見は、一切出ておりません。あくまでも静かに聞いていただいているという状況だと理解しております。
(河合氏)
取りあえず、三つ論点がありますので、今回、オーダーブック方式としてやることが継続できるかという話と、証拠金の倍率の問題と、それから、デリバティブの取引の履行として行った場合に、実際に現物のデリバリーが発生しますけれども、それは資金決済法と金商法で二重規制になるのかどうか、この三つ、非常に実務的に大きなところの提言を、われわれは行っております。今1点目について、ご質問をいただければと思います。
若干、補足すると、資金決済法でする現物取引については、金融商品市場という概念が資金決済法上ないので、これは継続される見込みだと考えています。なので現物の売買というものは板取引になり、場合によってはレバレッジをかけるものについては、現物信用という方式がないわけではないですけれども、現物をやりつつ資金を貸してレバレッジをかける、これは貸金業登録が必要です。そういった形でやるのではなくて、今までどおりCFDという形でやる場合には、FXをされてる方は慣れていると思いますけれども、オーダーブックではなくて、業者の出すツーウェイプライス方式になるかもしれないという話で、そこは実際にどういう弊害があるのかというと、例えば日本では、魅力がないので海外に流れてしまうのかとか、移転があるのではないかなというところです。業者の皆さんは、場合によっては非常に大きなシステム変更、それからサービス変更をしなければならないという点が、非常に重要な点で、業者間ではこれは、非常に活発な議論が行われたところではあります・・・
※第一部の本議事録はJCBA事務局で作成したものです。文責JCBA事務局。
(全体のデータは正会員・特別会員のみ公開)
『仮想通貨に関する規制動向』
日本仮想通貨交換業協会 事務局長 福井 崇人氏
(福井氏)
本日のトピックは仮想通貨業界の規制動向としております。私からはきょうは、まず金融庁事務ガイドライン、こちらは先般9月3日にパブコメの結果が出ており、網羅的な改正になっております。全部説明するには時間も足りませんが、仮想通貨の取り扱いの部分、仮想通貨の範囲や、ICOの部分は、自主規制規則と、金融庁の事務ガイドラインで整合しており、基本的には同じ考え方でできておりますので、事務ガイドラインについて簡単に説明させていただいた後に、JVCEAの先週末に出ましたパブコメの結果を踏まえて、JVCEAのICOに関する自主規制規則のお話をさせていただければと思います。
事務ガイドラインの改正ですけれども、6月21日からパブリックコメント開始されまして、7月に締め切りで、9月3日に結果が公表され、同日から適用が開始されております。下に改訂質問票の公表とありますけれども、新規の登録を目指す業者に対する質問票です。こちらも事務ガイドラインの改正と併せて改正されたものが、パブコメ結果のページで公表されております。
事務ガイドライン改正に関しては、金融庁の概要資料そのものですけれども、ご覧のとおり、金融庁で今まで、中間取りまとめですとか、ICOへの対応ということで、いろいろと監督されてきたものをまとめてガイドラインの改正につなげられております。資料を見ていただいたとおり、取り扱う仮想通貨の適切性の判断基準から、経営管理、利用者保護、AML・CFT、分別管理、流出リスクへの対応、システムリスクということで、網羅的な改正になっています。ICOに対する対応というのも右側で加えられています。ただしこちらは、今回の改正資金決済法の内容そのものは入っていません。ですので、後でもご紹介しますけれども、かなりの部分、JVCEAの自主規制規則を引用する形で、実質的に改正法に近いような内容がここに取り込まれているような立て付けになってます。きょうは、取り扱う仮想通貨の適切性の判断基準と、ICOへの対応という部分だけ、説明させていただきます。他の部分も重要ではありますけれども、時間の関係で割愛させていただきます。
Ⅰ-1は事務ガイドラインの番号ですけれども、仮想通貨の範囲等ということで、どういったものが仮想通貨に当たるのか解釈の指針になるところです。ここに3回ぐらい『ブロックチェーン等のネットワークを通じて不特定の者の間で移転可能な仕組みを有しているか』ということが記載されています。これは1号仮想通貨、2号仮想通貨、両方の判断基準に記載されています。これはどういうことかというと、パブコメの回答を下に引用していますけれども、この不特定の要件についての解釈です。不特定の要件というのは、不特定の者との間で売買や交換が可能かどうか、それから、不特定の者との間で決済に使用することができるかどうか、二つの条文上にこれら要件があります。これらの不特定の要件に関しては、個別具体的に判断されるべきものではあるけれども、こういったブロックチェーン上のネットワークを通じて、不特定の者の間で移転可能な仕組みがある場合には、広く転々流通することが合理的に見込まれるため、同要件を充足し、仮想通貨である可能性が高いという、従前からの行政解釈が金融庁の文書でも明確になったということと思います。
トークンの仕組み上、特定のものの間でしか移転できない等の制限が設けられている場合には、この不特定性の要件を充足しないと考えられます。ただし、例えば、その制限を事後的に解除する等によって、広く転々流通することが合理的に見込まれる場合には、同要件を充足する可能性があります。また、不特定性の要件は、例えば、トークンの移転先は本人確認等を経て、一定の審査、登録等が行われた者に限定しているという場合であっても、登録されるメンバーが継続的に入れ替わるというような場合には、やはりこの不特定性の要件を満たす可能性があります。例えば、KYCをした者だけに流通しますといっても、この不特定性の要件は満たす可能性があるということが、パブコメで回答されています・・・
『ブロックチェーンの相互運用プロジェクトの未来』
株式会社LCNEM 代表取締役 木村 優氏
(木村氏)
株式会社LCNEMの代表取締役、木村と申します。本日はよろしくお願いいたしします。日本仮想通貨ビジネス協会の勉強会ということでビジネスの話をしたいのですが、若干技術寄りな話をせざるを得ないので、可能な限りじっくりとかみくだいてやっていきたいと思います。3部まで残っていただき、まずはありがとうございました。では始めていきます。
まず相互運用とはそもそも何なのかという話ですけれども、ブロックチェーン同士を接続させて情報をやりとりできること、という定義になります。まだ抽象的な定義ですけれども、インターオペラビリティを実現すると言われているプロジェクトとして、CosmosとかPolkadot、他にも、広義のインターオペラビリティとしてはBitcoinDrivechainといったものが挙げられます。この中で、厳密にはこれら全てインターオペラビリティと呼ばれていますけれども、ここでは狭義のインターオペラビリティと準インターオペラビリティを分けて解説した方が、整理がつくかなと思いましたので、分けて解説をいたします。インターオペラビリティに含まれるべきプロジェクトとしてCosmosがありまして、概念として準インターオペラビリティに含まれるのがPolkadotとBitcoinDrivechainになります。インターオペラビリティと準インターオペラビリティの違いは、マージバリデーションの有無ですけれども、これについては後ほど解説します。
マージバリデーションとは何なのかということで、メインチェーンとサイドチェーンがある状態を想像していただくと分かりやすいかなと思います。例えばビットコインとビットコインのサイドチェーン、例えばLiquidと呼ばれるものがBlockstreamから出ておりますけども、そのような親チェーンと子チェーンの関係を想起していただければと思います。このような親チェーンと子チェーンの関係において、子チェーンのブロックのデータを親チェーンのブロックに含めます。もっとかみくだいていいますと、子チェーンのマイニングを親に任せるということになります。つまり、子チェーンは子ども単独でマイニング、バリデーションするのではなくて、親に任せるということになります。もちろん一人っ子とは限りませんので、子チェーンは親一つに対して複数存在します。つまり、複数の子チェーンのマイニングを全てまとめて親チェーンで行うのがマージマイニングと呼ばれるものです。マイニングというのはProofofWork、電気を消費してマイニングするProofofWorkにおけるバリデーションがマイニングだと言えますので、広義でProofofStakeなども一般化してマージバリデーションと呼ばれます。ここでは、このようなマージバリデーションによって相互運用性を実現しようとするプロジェクトを準インターオペラビリティと分類します。PolkadotやBitcoinDrivechainといった技術がこれに当たります。逆にいえば、PolkadotやBitcoinDrivechainがどのように相互運用性を実現しているかという問いに対する答えは、マージバリデーション、この一言で終わってしまいます。つまり、PolkadotやBitcoinDrivechainはマージバリデーションによって相互運用性を実現する技術であるということになります。Polkadotのリレーチェーンと呼ばれるものが親チェーンに当たりますけれども、パラチェーンと呼ばれる子どものチェーンが、親チェーンに対してバリデーションを委託するといった形になって、全てまとめて親チェーンにマイニングをしてもらえるということになりますので、子チェーン同士が互換性を持つということになるわけです。従って、Polkadotのパラチェーンは子どもチェーン同士や親チェーンに対して相互運用可能になるということになります。BitcoinDrivechainも完全に同様で、今あるよく知られてるビットコインに対してマイニングを委託するような仕組みが現在提案されています。
マージバリデーション、マージマイニングをせずに相互運用性、インターオペラビリティを実現しようとするプロジェクトをここではインターオペラビリティと分類します。これにはCosmosが該当します。Cosmosは先ほど説明しましたマージバリデーションと違い全く別物になっています。Cosmosの言葉の定義をまず、曖昧さを回避する必要がありまして、Cosmosと巷で言われている言葉は大きく分けて三つの意味があります。まずこれらの三つを整理しておかないと全く意味のない議論になってしまいますので、まずは整理をします。CosmosNetwork、CosmosHub、そしてCosmosSDK、Cosmosというと大体このような三つに整理できます・・・