『ブロックチェーンを対象にした保証業務に関する解説』
『FATF「仮想資産及び仮想資産サービスプロバイダーに対するリスクベースアプローチに関するガイダンス」の解説 ~暗号資産業界にどのような影響を与えるか~』
カリキュラム及び概要
- 日時:2021年5月28日(金) 17:30〜19:00
- 場所:オンライン配信
- 第一部 17:00〜18:00 : ブロックチェーンを対象にした保証業務に関する解説
第二部 18:00〜19:20 : FATF「仮想資産及び仮想資産サービスプロバイダーに対するリスクベースアプローチに関するガイダンス」の解説
■ 第一部 17:00〜18:00
ブロックチェーンを対象にした保証業務に関する解説
(講演者)
須田 真由氏 | PwCあらた有限責任監査法人 システム・プロセス・アシュアランス部 マネージャー |
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中雄 俊和氏 | PwCあらた有限責任監査法人 システム・プロセス・アシュアランス部 アソシエイト |
(講演概要)
日本公認会計士協会より、ブロックチェーンを対象にした保証業務に関する指針「非パブリック型のブロックチェーンを活用した受託業務に係る内部統制の保証報告書に関する実務指針」の草案が2021年2月に公表されました。
この指針は、SaaS(Software as a Service)やPaaS(Platform as a Service)
サービス利用時に見かけることの多い、SOCレポート(Reporting on Service Organization’s Control)に関する基準です。非パブリック型のブロックチェーンを念頭に置いた指針となっており、ブロックチェーン関連業務提供者の依頼に基づき、情報セキュリティやリスク管理態勢、関連する内部統制について、独立した第三者(監査法人や公認会計士)が、客観的に一定の基準に基づき証明する報告書制度の一つです。この報告書を利用することで、当該ブロックチェーンのシステム関連業務に関する内部統制についての信頼性を得ることができます。
勉強会では、当該草案の位置づけと内容を解説するとともに、簡単なディスカッションを行います。ブロックチェーンを利用して重要なシステムを構築する場合や、外部にサービスを提供する場合には、ブロックチェーンの技術的信頼性に依存するのではなくシステム全体の内部統制の信頼性を示す必要性が強く増してくると考えられますのでこの機会に、ブロックチェーンに関するSOCレポートについて概要を知ってください。
■ 第二部 18:00〜19:20
FATF「仮想資産及び仮想資産サービスプロバイダーに対するリスクベースアプローチに関するガイダンス」の解説~暗号資産業界にどのような影響を与えるか~
(講演者及びパネリスト)
福井 崇人氏 | アンダーソン・毛利・友常法律事務所 外国法共同事業 弁護士 |
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栗元 憲一氏 | 株式会社Nayuta 代表取締役CEO |
鈴木 雄大氏 | Fracton Ventures株式会社 代表取締役 |
(講演概要)
FATF(金融活動作業部会)は、2021年3月19日付で「仮想資産及び仮想資産サービスプロバイダーに対するリスクベースアプローチに関するガイダンス」の改訂ドラフトを公表しました。改訂ドラフトは、仮想資産(VA)及び仮想資産サービスプロバイダー(VASP)の拡大解釈を提案しています。例えば、スマートコントラクトやDappsの開発・運営に関与する事業者など、これまで必ずしも規制対象と考えられてこなかった関係者がVASPとして規制対象に含まれる可能性が示されています。
また、改訂ドラフトは、トラベルルールの適用に関する詳細なガイダンスも示しています。
本講演では、この改訂ドラフトの概要及び今後の暗号資産業界への影響について解説いたします。
『ブロックチェーンを対象にした保証業務に関する解説』
・須田 真由氏 : PwCあらた有限責任監査法人 システム・プロセス・アシュアランス部 マネージャー
・中雄 俊和氏 : PwCあらた有限責任監査法人 システム・プロセス・アシュアランス部 アソシエイト
(須田)
よろしくお願いします。私、須田からご説明をしていきます。簡単に自己紹介と本講演の趣旨をご説明します。まず、今回、お時間頂戴した経緯
からご紹介します。ご存じの方がいらっしゃるかもしれませんが、日本公認会計士協会から、2月3日付でブロックチェーンに関連する、いわゆるSOCレポートという指針が出ました。つい先週末に正式に公開されました。これに関して、私は草案の作成に関与していまして、ブロックチェーン関連のビジネスを行われているかたがたに向けてこのレポートがどういったものであるか、着目すべきポイントを少し絞りながらご紹介したく、今回お時間を頂戴しました。
主だって内部統制という単語にフォーカスしてお話をしていくので、聞き慣れていない方からすると、少し小難しい内容に聞こえるかもしれません。目的としては、システムの運用や保証をしていく中で、その手続きやシステムを展開している企業さまのサービスについてガバナンスの信頼性を外部に示して内部統制として評価していくことが必要です。結果として、それがサービスそのものの信頼度につながることがこの指針の根底です。そういったところで、簡便なお話ではありますがお聞きくだされば幸いです。今回講師をさせていただくのが、PwCあらたの須田と中雄です。
(中雄)
PwCあらた有限責任監査法人の中雄と申します。この実務指針の検討については、須田の下で検討に関わらせていただきました。本講演で、皆さまにいろいろとお伝えできればいいと思っております。よろしくお願いいたします。
※第一部は議事録が非掲載となります。
『FATF「仮想資産及び仮想資産サービスプロバイダーに対するリスクベースアプローチに関するガイダンス」の解説 ~暗号資産業界にどのような影響を与えるか~』
・福井 崇人氏 : アンダーソン・毛利・友常法律事務所 外国法共同事業 弁護士
・栗元 憲一氏 : 株式会社Nayuta 代表取締役CEO
・鈴木 雄大氏 : Fracton Ventures株式会社 代表取締役
(司会)
ありがとうございます。第2部は講演とパネルディスカッションで構成いたします。テーマは『FATFによるVASPガイダンス改訂案の解説~暗号資産業界にどのような影響を与えるか~』です。講演者は、今回JCBAより意見を提出しましたFATFのパブリックコメントを中心として取りまとめていただいたアンダーソン・毛利・友常法律事務所の福井弁護士、意見の提出に協力いただきました、株式会社Nayutaの栗元さま、FractonVentures株式会社の鈴木さまにお話しいただきたいと思います。
まずは、福井先生からのご講演です。よろしくお願い致します。
(福井)
ありがとうございます。改めまして、弁護士の福井と申します。よろしくお願いします。時間も限られておりますので、早速内容に入らせていただきたいと思います。
テーマはご紹介のとおりVASPのガイダンス改訂案について解説させていただきます。アジェンダとしては、まず前提として「1.FATFとは」、ないし、そのガイダンスの位置付けについてお話しします。本題で、「2.ガイダンス改訂案の概要」をご説明いたします。最後に、「3.暗号資産業界の反応」という所で、JCBA・他の団体による意見の内容を少しご紹介いたします。私からの最初の説明は30分程度で、残りの時間でパネルディスカッションをさせていただく予定でございます。
『1.FATFとは』です。概要はご存じの方が多いとは思います。FATFはマネロン・テロ資金供与対策の国際基準を策定し、その履行状況について相互審査を行う多国間の枠組みとされています。現状、37カ国・地域と2地域機関がFATFに加盟しておりますが、その他、9つのFATF型地域体を加えると、FATF勧告自体は世界190カ国以上の国、地域に適用されていると言われています。
特徴としては、もともと1989年に薬物取引・麻薬の取引とその収益のマネロン対策を主たる目的として、1年の限定で招集されたようです。その後、1990年に「40の勧告」が承認された後も、活動期間が延長され、勧告の改正が続けられて現在に至っています。特に、2001年の米国同時多発テロを受けてマネロンだけでなくテロ資金供与対策がマンデートに追加され、その後FATFの活動が活発化していると聞いております。現状、2019年にFATFの活動期間が無期限になって今に至っています。
『FATF基準の構成』です。今回、VASP向けのガイダンスの改訂案が示されています。いわゆるFATF基準と言われているものは、このスライドにある勧告および勧告の解釈ノートと用語集と言われているものであると説明されています。FATFの40の勧告自体が、当然FATF基準に入ります。解釈ノートというのは、勧告に基づいて各国が取るべき措置の具体的内容の特定がされています。また、用語集というのは、今回のまさにVASPやWireTransfer(ワイヤートランスファー)といった用語の説明・定義がなされています。今回のガイダンスは、FATF基準そのものではないけれども、各国がFATF基準を実施することを支援するために作成される文書で、FATF基準の順守状況を評価するために必須のものではないとされています。ですので、今回のVASPガイダンスも、この「ガイダンス」としてFATF基準の各国による実施を支援するための文書であるという位置付けであると理解できます。
また、FATF自体が国際法上どういう性質なのかがあまり広く議論がされていないので、今回改めてスライドにしております。FATFというのはマネロンやテロ資金供与などに迅速に対応するためにインフォーマルな形を取っていると国際法上の議論では説明されています。インフォーマルというのは、国際的に法人格を有しておらず、文書採択の手続きが略式的で全体会合においてコンセンサスで採択され、FATFの策定する文書はいずれも法的な意味での拘束力は有しないとされています。これは、文言がほぼほぼ『shall』ではなく『should』という文言を使われていることから読み取れると説明されています。
また、法的拘束力がないというのは今申し上げたとおりですが、実際には相互審査等の枠組みがあり、事実上はかなり強い拘束力があるのではないかと理解されています。こういったインフォーマルな形式であること、実際には非拘束的だが事実上は拘束力が強いことから、民主的正当性について課題があるのではないかという指摘がされています。「密室性への不信」とも言われています。今回のガイダンスに関してもVASPないしDeFiなど様々な点についての理解が実態と異なるという業界からの反応がありますが、こういったところが背景にあって問題提起がなされています・・・
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(栗元)
株式会社Nayutaの代表の栗元と申します。よろしくお願いいたします。株式会社Nayutaの紹介をさせていただきます。Nayutaは2015年に福岡市に設立された、ブロックチェーン暗号通貨関連の会社です。主要外部株主としてはJAFCO様、BDashVentures様から出資をしていただいています。自分たちの事業としては二つあります。一つはライトニングネットワークという、ビットコインのセカンドレイヤーでありパブリックチェーンでビットコインの送受金を瞬時に行うという技術に関する事業、もう一つはエンタープライズブロックチェーンに関する事業です。ライトニングネットワークの事業においては、単なるアプリ開発だけではなくて、プロトコルそのものの開発にもコントリビューションしています。そういう意味においては、もちろんビジネスがメインですが、コミュニティーとビジネスの両方に関わっているという位置付けの会社です。エンタープライズブロックチェーンのほうは大手プロジェクト等においてブロックチェーンの導入やR&D、チェーンの選定からアプリ開発まで担当しています。
FATFのガイダンスにおいて細かくは福井先生からいろいろとご説明があったので、自分はパネルセッションではFATFのガイダンスの外側、それがどういう位置付けにあるのかですとか、自分がそれに対してどう感じているのかというところを説明します。もちろん、それが全て正しいかはわかりませんが、理解を深めてもらいたいという意図で発表します。
ここにはビットコインにおいて自分たちが今まで行ってきた活動において感じていることを記載しています。開発コミュニティーやビジネス、国家や政府のようにレギュレーションをつくる所が複雑に関係していて、いろいろとベクトルが違う方向を向いています。一緒の方向を向いたり、違う方向を向いたりを繰り返しながら進んでいるという構造があります。例えば、ビジネスと開発コミュニティーというのは、普通は外側から見るとあまり見分けがつかないと思いますが、そこにも多少利害対立のようなものが存在しています。ビジネスは当然、収益性を最大化することが目的なのでどこかのポイントで独占したいという行動原理があります。それに対して、開発コミュニティーはとにかく分散させたい、どこかに影響力を持たせたくない。そういう所で利害の対立があります。それから、ビジネスと国家は、ビジネスのほうは利益を最大化させるために何でも広げたいのですが、国家のほうは金融システム破綻を絶対に許せません。また、今回話題があったアンチマネーロンダリングを強めたいという意思があり、そこにも利害対立があります。ビジネスと国家において国家がレギュレーションを簡単に法人に対してかけられる一方、開発コミュニティーと国家において、国家は基本的にコミュニティーの個人開発者に対してレギュレーションをかけにくい構造になっています。それは、開発コミュニティーの個人には人権があり、そこに制約を設けるのは難易度が高いという利害対立があります。ここら辺の構造をベースに、今回パネルセッションでいろいろ話をしたいと思っています。
(福井)
栗元さん、ありがとうございます。では、次に鈴木さんに自己紹介をいただければと思います。
(鈴木)
改めまして、よろしくお願いします。FractonVenturesの鈴木と申します。私は、JCBAさんの勉強会で話させていだだくのは随分久しぶりで、この会社を立ち上げてからは初めてです。会社としてコミットしている注目領域が2つあり、事業やサービスというよりはテーマが2つある形の会社を経営しています。
1個が『Web3.0』です。このうちの中にDeFiやNFTといったものが入ってくると、われわれは理解しています。幾つかのマーケットは既にイールドが立ち始めて世に現れている。そのうちの一つがDeFiで、もう一つがNFTだと理解をしています。もう一つ、われわれは『WecanDAOit』というDAO化をスローガンに掲げて、DAOにまつわる事業を作っていこうと準備している会社です。
次に、本パネルセッションでお話しさせていただきたいと思った例としては、特に今回のFATFのドラフトにおけるDeFiやDeFi開発者に対する幾つかの規制についてです。具体的には、現状の開発前・途中における開発者の存在のモデルや、マルチシグの運用方法と、今のドラフトと照らした懸念点について話をさせていただきます。
特に今回ドラフトで大きく修正が入っている箇所は、相当DeFiを念頭に置いて修正を入れていらっしゃったと感じる文章でした。もちろん、やみくもに他の暗号資産を動かせるサービスを提供している者を、規制範疇内に置いておくことに関しては、特段に異論はありません。しかし、その度合いや意味合いなどのモデルをどうとでも解釈できる文章で落とされていると理解をしております。
もちろんこの辺りが、現状に即した運用をされていくのであれば問題ないと思います。しかし、特にDeFiのイノベーションである、ミドルマンフリーで金融サービスが行われてそれがソフトウエア化していく、中間的な存在がなくずっと動き続けるプロトコル―だからプロトコルと呼んでいますーといったサービスの意義を失いかねないことが当社の懸念点です。マルチシグに関しては以上です。
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(福井)
ありがとうございます。そろそろ時間になりますので、私のほうでまとめさせていただきます。
FATFが密室で決めたことがどんどんと出てきていますが、このままだとイノベーションも阻害されますし、いろいろと無理がある内容になってしまいます。より透明性を持った議論をできるような形にしていくことが必要です。そのときには、プライバシー、金融包摂といった幅広い関係者が入ることが望ましいと思います。
とはいえ他方で、このFATFのガイダンスは恐らくこのまま走っていくとも思われます。そういった意味で短期的には、書いてある内容自体がかなり曖昧で抽象的なところもありますので、ある意味でうまく工夫し解釈して付き合っていく。日本の中でも当局を含めて議論をしていく。各国でプライバシーの概念について濃淡があると思います。日本は特にプライバシーの議論が強い国ではありますのでどう落としていくのか、これから国内での議論を活性化して、きちんと議論していくことが重要というふうに思いました。
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