『Web3の可能性と大企業の参入戦略とは!~明日から始める1ステップ~』
カリキュラム及び概要
- 日時:2023年4月19日(木) 17:00〜18:30
- 場所:オンライン配信
- 第一部(講演) 17:00〜17:30 : 『パブリックブロックチェーン上のデジタル資産、Web3を取り巻く環境・体験からひも解くWeb3~Art、移動×トークン、マイクロペイメント×サービス、DAO~』
第二部(パネル) 17:30〜18:30 : 『Web3の可能性と大企業の参入戦略とは!~明日から始める1ステップ~』
(講演概要)
昨今「Web3」に注目が集まり、グローバルではスターバックスがNFTを導入し、日本ではKDDIがメタバース・Web3サービス「αU」を始動、スクウェア・エニックスはNFTプロジェクト「SYMBIOGENESIS」にてブロックチェーンを採用することを表明、トヨタ自動車もweb3グローバルハッカソンへの協賛を行うなど、大手企業によるWeb3事業への参入が目立っています。
これらの後押しをすべく事業者は、自民党デジタル社会推進本部web3PT、税制改正大綱での税制の改善、ステーブルコインの流通に向けた法整備等など、政治行政と一体となり環境整備に取り組んでいます。
本イベントでは、大手企業でWeb3というコンセプトの活用を検討されるご担当者様らと、その可能性、実際に事業を進めるうえでのヒントや課題となる点を議論し、事業者全体で参入促進の後押しや課題解決に繋げます。
■ 講演者
第一部
大津 良裕 : 一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会 マネージャー
第二部
パネリスト(名前順)
清水池 昇氏 :
トヨタファイナンシャルサービス株式会社 戦略企画部 ブロックチェーングループ シニアマネージャー
舘林 俊平氏 :
KDDI株式会社 Web3推進部長 兼 BI推進部
畑 圭輔氏 :
株式会社スクウェア・エニックス ブロックチェーン・エンタテインメント事業部 事業部長モデレーター
廣末 紀之 : 一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会 会長 ・ ビットバンク株式会社 代表取締役
第一部 :
『パブリックブロックチェーン上のデジタル資産、Web3を取り巻く環境・体験からひも解くWeb3~Art、移動×トークン、マイクロペイメント×サービス、DAO~』
大津 良裕 : 一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会 マネージャー
(大津)
第1部では、Web3を取り巻く事業環境のおさらいをします。Web3は、ユーザーがサービス設計に関わることができる、FatProtocolのビジネスチャンス、新たな資金調達手段、GAFAから個人データの主権を取り戻すなど、さまざまな語り口がありますが、本日は言葉の定義から離れ、暗号資産やトークン等がもたらすユーザー体験について、ユーザー目線の切り口でトピックを取り上げます。第2部のパネルディスカッションでは、事業者から具体的なサービスや課題について話をいただきます。
日本暗号資産ビジネス協会の紹介をします。2016年設立の当協会は、パブリックブロックチェーンやWeb3のエコシステムを構成するステークホルダーが、日本国内において暗号資産、NFT、ステーブルコイン等のデジタル資産に関するビジネスを行うための、環境整備を目的とする会員組織です。各会員企業が持つ知見を持ち寄り、調査研究や政策提言、その実現に向けたロビー活動、ひては業界の健全な発展促進を目的に活動しています。事業内容の中でも、特に分科会の活動は会員事業者、法律事務所や監査法人によって構成、運営されています。事業者一丸となって技術を育て、産業をつくり上げる団体です。
入り口としてパブリックブロックチェーン、Web3について復習します。サービス設計のRDBのような技術とパブリックブロックチェーンの違いを説明します。グローバルに誰でも価値移転が可能で、その達成のための二重支払いがないことを検証でき、これをもって単一サービス内に価値が閉じないということが要点です。ビットコイン、EthereumやPolygonなどに国境や事業者の垣根はありません。パブリックブロックチェーンでは、自由にノードを立て、取引が確かであることを検証します。また、発行された暗号資産、NFT、ステーブルコインのようなアセットは、基本的に、特定サービスに閉じることなく移転が可能です。ここ1、2年、これらを基盤に開発が活発化しています。
Web3のネットワークイメージ図を、生成系AIのStableDiffusionで描きました。絡み合う多くのブロックチェーンネットワークをイーサリアムのような大きなブロックチェーンが包み込み、線の中をアセットが移転します。さまざまなブロックチェーンの中で、この規格は地域ごとの飛び地で、マーケティングなどの異なる展開を見せているため、複雑に折り重なっています。エンタープライズのプライベートチェーンや、ユースケースに特化したチェーンが包含されることもあり得ます。これらをパブリックチェーンがつないで、価値移転を行っています。
・・・
アカウントや投稿に対して10~数円程度の少額の投げ銭ができます。いいと思われた投稿に投げ銭が集まっています。プロトコルの課題はありますが、オープンソースで簡単な設計なので、草の根エンジニアの関心を引き、定着しています。日本のコミュニティーが特に活発で、Nostrに出資しているジャック・ドーシーから、日本人に投げ銭をするためにリプライを呼び掛けるという面白い出来事もありました。譲り受けたコインで投げ銭したり、このサービスから暗号資産を購入した人もいます。投げ銭を受けたsatsは、このサービスに留まらずさまざまな場所で利用できます。
DAOは、何を形づくるかはさまざまで、オープンソース開発にトークンを組み込むという捉え方もあります。カルチャーという側面からも捉えられます。最近のイベントでは、その場でTelegramやDiscordを交換し、相手のプロフィールに飾られているNFTを見るというやりとりがあり、スピード感のあるコミュニケーションを感じられます。このようなツールの活発化と相まって、形成されているカルチャーとしての側面があり、自身の秘密鍵1本だけで個人が気軽につながれることに、ファンクラブやオンラインサロンとは異なる人の集まり感じます。
以上、Web3として、パブリックブロックチェーン上のトークンを取り巻く事業環境やサービス等の体験や実験的な考察を紹介しました。まずはサービスを触って、コミュニティに飛び込んで、その感想を語り合えればうれしいです。この後のパネルディスカッションでも、より現場目線での話になると思います。
講演資料・議事録全文・動画アーカイブは会員専用ページご確認いただけます。
第二部 :
『Web3の可能性と大企業の参入戦略とは!~明日から始める1ステップ~』
・ 清水池 昇氏 :
トヨタファイナンシャルサービス株式会社 戦略企画部 ブロックチェーングループ シニアマネージャー
・ 舘林 俊平氏 :
KDDI株式会社 Web3推進部長 兼 BI推進部
・ 畑 圭輔氏 :
株式会社スクウェア・エニックス ブロックチェーン・エンタテインメント事業部 事業部長
モデレーター
・ 廣末 紀之 : 一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会 会長 ・ ビットバンク株式会社 代表取締役
(廣末)
JCBA会長の廣末です。本日は世界に冠たる、日本の三つの大企業を招き、『Web3の可能性と大企業の参入戦略とは』と題して、パネルディスカッションを開催します。
わが国では、骨太の方針2022に、Web3推進に向けた環境整備指針が盛り込まれ、自民党web3PTでは活発な議論が行われて、経済産業省のWeb3.0政策推進室が設置されました。最近では、web3推進が自民党の政策にも正式に採択され、国を挙げてのWeb3産業推進機運が高まっています。本日招いている大企業のWeb3事業への参入表明も相次ぎ、民間の動きも活発化しています。産業発展には、ベンチャー企業に大企業を交えた、相互に刺激し合う中でのイノベーションが引き起こされることが必要なので、この動きを歓迎しています。
一方、この業界ではITや金融が複合的に混ざり合い、非常に複雑です。技術の側面にも難解さがあり、非常に特殊な業界です。それ故に、特に体制が固まっている大企業にとっては、事業参入や構築、運営において、困難な面があります。本日は、特に大企業の視点でWeb3の事業戦略や取り組み状況、およびその課題などを、ディスカッションを通じて明らかにしたいと思います。
パネリストの簡単な自己紹介です。トヨタファイナンシャルサービスの清水池様からお願いします。
(清水池)
清水池です。私は新卒で銀行に入り、法人営業を担当しました。その後、2013年から2017年に駐在した上海では、WeChatPayとアリペイというモバイルペイメントサービスが急拡大していました。WeChatPayはLINEPayで、アリペイはPayPayのようなものです。それらの普及を目の当たりにして、フィンテックに興味を持つようになり、帰国後にはコンサルティング会社に転職し、個人向けのデータ利活用や顧客エンゲージメント、ブロックチェーンに関するプロジェクトを担当しました。
その後、2021年8月より、現職のトヨタファイナンシャルサービスに所属しています。現職では、B2B領域のNFTやSSI/DIDに関するプロジェクトやサプライチェーンに関するプロジェクトを担当しています。
次は会社の紹介です。弊社はトヨタ自動車の完全子会社で、グループ内で自動車販売の金融サービスを統括するホールディングスです。主な業務は販売金融事業で、在庫の融資や割賦やリース、クレジットカード事業を行っています。私が所属しているブロックチェーングループの取り組みを紹介します。弊社のブロックチェーングループは、主体となって、2019年4月に、ToyotaBlockchainLabというバーチャル組織を立ち上げ、この活動を中心に進めています。
ミッションであるグループ内外の仲間づくり、技術および事業の知見蓄積に基づいて、活動内容を簡単に説明します。一つ目、グループ内外の仲間づくりは、グループ内外でのブロックチェーンに関する認知度向上のために、勉強会等を行っています。直近のテーマでは、ブロックチェーンとNFTの歴史を取り上げました。また外部企業との情報交換として、国内外のスタートアップ、大企業などとの情報交換を行っています。
二つ目、技術および事業の知見蓄積です。多くの会社との情報交換の中で出てくる具体的なプロジェクトを進めて、実用化の検討・実行をしています。以上です。
(廣末)
トヨタ様は自動車のイメージが強いと思いますが、不動産、金融、サプライチェーンなどWeb3の宝庫で様々な適用材料がおありです。今後出てくるお取り組みが楽しみです。続いて、KDDIの舘林さんです。
(舘林)
KDDI事業創造本部、Web3推進部長の舘林です。私は以前、移動体通信のネットワーク設計を担当していました。2012年からはKDDI∞Laboというスタートアップのアクセラレーションプログラムや、KDDIOpenInnovationFundというスタートアップに投資する部門に所属し、スタートアップに出資しながら、そのスタートアップと組んで、スポーツ、エンターテインメントやXR事業の立ち上げなどを担当しました。最近では、バーチャル渋谷というXR空間での事業化を推進しています。
昨年はKDDI∞LaboやOpenInnovationFundを主管していましたが、今期からはαUというWeb3やメタバースを総称したサービスの推進も目指して、Web3推進部も立ち上げています。
KDDIは通信会社、スマートフォンを売る会社というイメージが強いですが、それ以外の新規事業を多く立ち上げています。その際のスタンスは、自社だけで内製で地道に作るのでなく、外部と組むことです。例えば、コマース事業やデジタルマーケティングの立ち上げ時にも、外部の会社と組みました。最近のエネルギーの事業を立ち上げも同様でした。通信のプランであるpovoの立ち上げも外部の会社と組んで行いました。
国内の新事業立ち上げでは外部のパートナーと組み、素早い立ち上げを目指しています。その方法として、スタートアップとの組み方を進めています。左側は、2011年から進めている、KDDI∞Laboというインキュベーションのプログラムです。以前はスタートアップが事業を起こす際に、経営や大企業とのつながりをつくるなどの、サービスやプロダクト以外の部分の支援をKDDI一社で行っていました。スタートアップの事業領域も徐々に広がり、スタートアップと組みたいという国内の大企業が増えたこともあり、現在、KDDI∞Laboには、77社の日本の大企業も入っています。この77社とスタートアップが向き合って新しい事業を生み出すというスキームで運営しています。
これにより、スタートアップは、77の大企業へのプレゼンテーションが1回で済み、コストは77分の1になります。一方、大企業は、ここに来るだけで、最近はやっているスタートアップや可能性のある領域の情報を取ることができます。私たちが関係しなくても、新規事業が次々に生まれることを目指して、このプログラムを運用しています。
右側のKDDIOpenInnovationFundは、2012年から運用しているスタートアップ向けのファンドです。現在、300億円少しのファンドを運用中です。私たちがWeb3事業を開始したのは本年ですが、スタートアップの業界では、2、3年前から盛り上がっています。ファンドでは、Web3企業やブロックチェーン型の技術を持つ会社にアクセスしながら、一緒に事業をつくることを目指しています。以上です。
(廣末)
KDDIはスタートアップフレンドリーで、通信とWeb3の親和性も非常に高いです。現在、舘林さんが推進中のαUにはメタバースもあり、これも通信と関係します。JCBAの会員にも貢献できる方がいると思います。
3番目はスクウェア・エニックスの畑さんです。
(畑)
スクウェア・エニックスの畑です。私は、10年前に業界のコンソールゲームの開発からスタートし、ミドルウエアを使ったソリューションの開発や組み込み系の開発等を経験しました。また、組み込み系の仕事で遊技機の開発をしていた関係で、その分野の学生を育てる講師業務の経験もあります。現在はブロックチェーン黎明期ですが、10年以上前の若い、オープンソースのミドルウエアなどを世に広めたいということで、個人的なエバンジェリスト活動もしていました。Cocos-2Dというオープンソースエンジンの執筆なども行い、出版も経験しました。そのような10年を過ごした後に、現職に就きました。
テクニカルディレクターを長く務めましたが、より全社貢献したかったので、プラットフォーム関連の折衝や部門支援を行う業務部に異動し、2021年に部門長に就任しました。2017年頃から、ブロックチェーン事業へのリサーチをしていたので、部門長就任のタイミングと併せて、当社の自分事としてプロダクト製作が必要だと考え、NFTデジタルシールとして、資産性ミリオンアンサーを2021年10月にリリースしました。
その成果もあり、翌年にブロックチェーンエンターテインメント事業部の立ち上げ命令があり、事業部長に就任して、1年以上が経過したところです。この部署はまだ設立したばかりで、メンバーも20名だけですが、ブロックチェーン、NFTを用いたコンテンツ、エンターテインメントの開発を目指して、複数のプロジェクトを回しています。
主なミッションとして、大手企業が参入しにくいといわれる、NFTを使ったビジネス構造や収益構造の検証を行います。また、ファンジブルトークンを前提とした、トークノミクスやトークンエコノミーの経済圏の設計もあります。ユーザーのコミュニティーを重要視しているので、その部分の検証を行います。ユーザーコミュニティーをベースとした、ものづくりの考え方やプロセスも検証します。
プロダクトをつくるためのガイドラインやポリシーが整備されていないので、私たちがイニシアチブを取りながら、ゲーム団体としてのガイドラインの策定を行っています。以上です。
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(廣末)
IT 業界は、スタートアップフレンドリーな KDDI を見ています。Web3 の旗を揚げることで、関心は高まっていると思いますが、この部分の課題はいかがですか。
(舘林)
畑さんの話と同様で、税や会計、法律については決まっていないことも多い中で、どこまで踏むかという話があり、非常に難しいです。私たちの部署は、本年、部になりました。昨年はまだ Web3 推進室で、全員兼務の組織でした。法務部や経理部の人も巻き込み、専門家を各部門に置きました。省庁系の対応をする人にもグループチャットに入ってもらいました。自民党 web3 PT で出てきた提言から何に気を付けるべきかという世間の動きとスタートアップの動き、またトラディショナルカンパニーを動かすための力を三位一体で付けながら進める運用が必要です。従来の新規事業のように担当が進めるだけではいけません。社内の各部門の、部門長クラスの人たちに、Web3 を説明する作業に、1 年半から 2 年を要しました。
(廣末)
まずは社内の理解を深め、協力体制をつくることが重要です。
(舘林)
従来の新規事業と比べると、コミュニティーに飛び込める、テンションの若いメンバーを多く集めています。机上検討の Web3 ではなく、STEPN を経験しているような、飛び込んだメンバーが持ち帰った知見を事業に生かしたいと思っています。
(廣末)
先週末に参加した、ETHGlobal のサイドイベントでも若い人が多かったです。舘林さんのチームもそうですか。
(舘林)
メンバーには若い人が多いです。
(廣末)
そのようなノリは必要です。
(舘林)
組織の名刺の組織部分が取れたくらいでちょうどいいというコミュニティーになっているので、そこに飛び込まなければ、得られるものもありません。
(廣末)
舘林さんがそのようなノリを受容して、その雰囲気で進めていることに、非常に身近なものを感じます。ぜひそれを貫いて、Web3 の模範的な活動をしてください。清水池さんの所はいかがですか。
(清水池)
やはり、巻き込むことや理解を得ることは重要です。説明の内容は、役員、部長クラス、実際に入ってもらえる方などのレベルに分けて変えています。会計の部分や法務の部分を可能な限り早めに巻き込むことも必要です。
(廣末)
トヨタグループでは、特に法務が非常に厳しいのではないですか。
(清水池)
先程の畑産の GDPR のお話のように、個人情報が入るかどうかで全く違います。グローバルでやるとなれば、それは避けて通れません。
(廣末)
トヨタの、この辺りの扱い方には非常に関心があります。しかしまずは社内の理解が必要です。レイヤーごとに理解度や受容性も異なるので、分けて説明することも必要です。清水池さんの活動は産業の拡大に直結しています。よろしくお願いします。
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