『新しい暗号資産法制の概要』
『暗号資産カストディアンのセキュリティ対策について』
カリキュラム及び概要
- 日時:2019年3月22日(月) 17時00分~19時10分
- 場所:フクラシア丸の内オアゾ Hall A(16階)
- 第一部 「新しい暗号資産法制の概要」
株アンダーソン・毛利・友常法律事務所 河合 健氏 - 第二部 「暗号資産カストディアンのセキュリティ対策について」
Cryptoassets Governance Task Force Security Working Group 主査 楠 正憲氏
『新しい暗号資産法制の概要』
アンダーソン・毛利・友常法律事務所 河合 健氏
皆さん、こんにちは。本日はよろしくお願いいたします。3月15日に資金決済法の改正案、金商法の改正案、金融商品販売法の改正案が出ております。そこで仮想通貨に関する法制が大きく変わるということで、急遽この演題でお話しさせていただきます。ただし、今回の改正は多岐にわたりまして、1時間で本来的にはご説明が難しいと思います。よって本日は、概要ということでお話しさせていただきます。どうぞよろしくお願い致します。
始めにディスクレーマーを書いております。念のため申し上げますと、今回の発表は私の個人的な見解によるものであって、アンダーソン・毛利・友常法律事務所の見解を示すものではありません。また、私、当協会の顧問弁護士ですが、日本仮想通貨ビジネス協会の公式な見解でもありません。
では、本日の概要です。大きく分けて、資金決済法の改正、金商法の改正、金融商品販売法の改正になります。
資金決済法の改正案では、まず名称が変わり、「仮想通貨」から「暗号資産」へ呼称が変更します。それから暗号資産カストディ業務に対する規制が行われます。ウォレットサービス等に対する規制が行われます。それから、暗号資産交換業のさまざまな業務ですが、例えば広告・勧誘規制といったところです。それから分別管理義務の内容も変わり、そのあたりの規制強化が行われます。
それから、金商法の改正案ですが大きく分けて三つの柱があります。一つ目は、暗号資産デリバティブ取引です。かつては規制対象ではありませんでしたが、これが規制対象になります。二つ目は、電子記録移転権利です。この名前は皆さん覚えていただきたいと思いますけれども、簡単にいうとセキュリティートークンです。この電子記録移転権利に関する規制が加わります。三つ目は、これまで相場操縦といった不公正取引に関する規制がありませんでしたが、暗号資産、それから暗号資産デリバティブ等を用いた不公正な行為に関する規制が加わります。これらが柱になります。
それから、金融商品販売法です。これまで仮想通貨は対象に入っていませんでしたが、暗号資産を取得させる行為についても、金融商品販売法、金融商品の販売というところに含めるということになっています。本日は時間の関係で、金販法の改正は、割愛させていただきます。
資料にはありませんが、今国会に提出されて、これから国会審議ということになります。一般的なタイミングとしては、衆参を通り、5月中とか6月頭に公布と予想されます。今年は、平成から次の年号への変わり目になりますので、少しタイミングが変わるのか分かりませんが、基本的にはそのぐらいのタイミングで、法案が通り公布されます。施行は、公布から1年以内ですので、実際に当該法律が施行されるのは、例えば2020年4月頃が予想されます。よって、それまでは現行法のままですので、実際に変わるのは翌年からです。ただ、準備は世の中、始まっていくと考えています・・・
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もう一つ大きなところは、施行日から起算して 1年6カ月までしかみなしとしての業務は継続できないということです。ですから6カ月の申請期限のときから計算すると 1 年です。それを超えてはできないということなので、お尻が決まりました。なので、その期間内に登録をとらなければいけないということになります。
あともう一つ、これも重要ですけれども、みなしはこれまで、自分はみなしであるという宣言をしなくても、実際に施行時に業を行っていればみなしにはなっていたわけです。ですが今回からは、施行日から起算して2週間以内に、その商号と所在地を届ける必要があります。細かいことはやらなくてもいいですが、当社は誰で、所在地はここです、ということをいっておかないとみなしのステータスになりません。これはどういう人たちがみなしなのか把握するということです。ですからこれを怠ると、みなしにはなれないということになります。これは暗号資産交換業でもそうですけれども、金商業、例えば仮想通貨のデリバティブとか、電子記録移転権利を扱う業者としてやる場合も、これはほぼ同じルールが適用になります。なので、みなしでやろうとされている方は、このあたりだいぶルールが変わりますので、ご注意いただければと思います。
あと、実務的な観点からいうと、おそらく今、仮想通貨の交換業取るのに、6 カ月で登録申請の受理をしてもらえるケースはほとんどありません。申請受理までに1年ぐらいかかります。金商一種も結構長く、1年とか普通にかかるレベルです。なので、6カ月以内に登録申請をするといっても、例えば4月に改正法が始まって、そこから準備をスタートしても、正直申し上げて間に合わないと思います。ですので、事前からよく検討してご準備いただくことが重要かと思います。その意味では、例えば内閣府令とかガイドラインは、ぎちぎちではなくて、割と早めに金融庁さんに出していただきたいと、個人的には思っております。
『暗号資産カストディアンのセキュリティ対策について』
Cryptoassets Governance Task Force Security Working Group 主査 楠 正憲氏
よろしくお願いします。JCBAの勉強会でお話しさせていただくのは、2回目になりますが、前回の話と打って変わって、セキュリティ対策どうしていくかというところで、この1年CGTFという団体で議論をしていたことについてお話しをさせていただきます。堅苦しいところに入る前に、私自身の簡単な自己紹介をさせていただきます。私自身は、今のメインは、MUFGのJapan Digital Designというフィンテック回りをやる会社、銀行高度化等会社になりますが、そちらでCTOをさせていただいております。また並行して、ずっとこの7年近く、マイナンバーの後ろ側の仕組みを作っておりました。もともと、JDDに入る前は、5年少しYAHOO!JAPANにおりまして、ちょうどこの時期、私がID部門を持った直後ぐらいですが、150万件近くのID漏えい事件が起こり、その再発防止等をやる形で数年セキュリティをやっていました。
CGTFは、聞き慣れない言葉だと思います。最初は、VCGTFでしたが、最近役所が、仮想通貨ではなく暗号資産と呼び始めたため、Vを取りCGTFと呼んでいます。もともとのきっかけを申しますと、昨年のコインチェック事件の直後ぐらいの頃ですが、その頃にJCBAとJBAが、どういうふうになるのかがはっきりしませんでした。それでも、連休明けぐらいには認定自主規制団体が立ち上がると期待はしていましたが、相当間があるだろうということで、せめて自主規制団体が立ち上がる前の段階で、交換所、セキュリティの専門家を入れ、ある程度セキュリティについて考え方の整理ができないかという趣旨で、昨年の2月の頭に立ち上げた団体となります。
お目付役と申しますか、議論全体をきちっとレビューしていくような立場で、京大の岩下先生、立命館の上原哲太郎先生、ジョージタウン大学の松尾真一郎先生に、Board of Trusteeという形で入っていただいて、私が主にセキュリティ回りの議論の取りまとめをさせていただいております。また、セコム、PKIの世界では有名な松本泰さん、それから OpenIDファウンデーションというアメリカのID連携やAPIセキュリティの規格を決めているNPOの理事長をしていたNRIの崎村さん、それからセコムの佐藤さん、島岡さんにEditor として入っていただいて取りまとめている仕様となります。
もともと、始まりがコインチェック事件でしたので、セキュリティを中心として議論をしていいます。ですが例えば、企業の中では研究開発で暗号資産を使ったときに、中の経理上の取り扱いどうするのか悩んでいる方もいらっしゃって、そういったワーキンググループを準備する話もします。大学の研究者も含めて、この辺の内部の会計ルールがしっかり無いらしく、皆さん自分の手金で買って、資金を溶かしてる方がいらっしゃるようです。特に、イーサリアムのパブリックチェーン上でいろいろ行うためには、燃やすためにもイーサリアムが必要です。なので、投資目的ではありませんが、研究のためにイーサリアムを買って、それが全部自腹になってるという方が大学の先生に沢山いらっしゃいます。大学はおそらく文科省になります。時間がかかると思いますが、せめて上場企業で管理部門から怒られない暗号資産の買い方が決められないかという議論もします・・・
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そういったことも含めて、私どもとしては、考え方の文書の日本語版から、ISO等に文書を出します。それを、JVCEA で検討いただいて、技術委員会で、今チェック項目等をまとめられていらっしゃると認識しております。加えて、暗号資産に限らないところでカバーすべきものの対応表、FISCには当然暗号資産がらみのところは書かれていません。なので、これらの考え方の文書で書かれているものをもう少しFISCライクにブレークダウンしたものを中では作っておりますが、どういう形で世の中に出していけるかはまだ検討中です。恐らく今後、2線、3線の方々にご理解いただきやすい文書も必要になってくると思うので、何らかの形できちっと見ていただけるものにしたいと思います。
そういったことも含めて、われわれも多少悶々としながら仕事をしております。研究会も終わって、法改正についても現在国会で行われてるという中で、これから出てくるいろんな論点を、どういうところで議論していくのかは、まだわれわれからも見えてない部分です。
また、KYCがらみというのは今後も論点であり続けると思うので、この辺の議論もあります。そして、Stable Coinもあります。あるいは、私自身この間Zaif事件で漏れた、モナコインの追跡等もやっていましたが、これもやはり、従来でいうと、今度のカストディアンの定義にも入らないような取引を、トランザクションを受け取ってブロックチェーンに流していくところで、ログ管理の在り方がどうあるべきかとか、いろいろ課題も見えてきています。ですが、この辺は日本だけでルール作ってもしょうがない話です。実際、盗まれたモナコインでいえば、フランスとかドイツも含めて、サーバーが置かれていた中で、どういうところで、そこのレギュレーションを考えていくのが、イコールフッティングで、きちっと意味のある形にできるのか考える必要があります。さらに、まだ気が早いところではありますが、Layer2や、ILP、いろんなブロックチェーンそのものではないテクノロジーで、暗号資産の周辺で出てきてるものもあります。その中で、ここにはどういったリスクがあるのか、こういったことも議論をしていきながら、何らかの形でアウトプットしていきたいと考えております。
ご清聴ありがとうございました。