『ビットコインマイニングのエネルギー消費と環境負荷について』
『FATF改訂ガイダンスの解説』
カリキュラム及び概要
- 日時:2021年11月30日(火) 17:00〜19:00
- 場所:オンライン配信
- 第一部(講演) 17:00〜18:00 : 『ビットコインマイニングのエネルギー消費と環境負荷について』
第二部 18:00〜19:00 : 『FATF改訂ガイダンスの解説』
■ 講演者
第一部(講演)
練木 照子氏
ビットコイン研究所
第二部
福井 崇人氏
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 弁護士
第一部 : 『ビットコインマイニングのエネルギー消費と環境負荷について』
練木 照子氏
ビットコイン研究所
本公演については、一般公開致します。
※講演資料は会員限定となります。
ビットコイン批判の定番の一つであるマイニングのエネルギー消費と環境負荷の大きさについて、今年9月にNYDIGが発行したレポート「Bitcoin Net Zero」および10月に開催された「Texas Blockchain Summit」で紹介されたデータと事例を基に最新状況をご紹介します。
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第二部 : 『FATF改訂ガイダンスの解説』
福井 崇人氏
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 弁護士
(司会)
それでは第2部に移ります。第2部は10月にFATFから公表されました暗号資産および暗号資産交換業者に対するリスクベースアプローチに関する改訂ガイダンスについてです。こちらは春に、福井先生を中心にJCBAからもパブリックコメントを提出しました。その結果を踏まえて修正が出されているもので、その重要な論点について解説いただこうと思います。それでは福井先生、よろしくお願いします。
(福井)
FATF改訂ガイダンスの解説ということで、早速内容に入りたいと思います。
念のためですが、これは私の意見であり、所属する組織の見解を示すものではないことを最初にお断りします。
今回は、そもそもFATFとはどのような組織なのかも含めて振り返りをした上で、改訂ガイダンスの概要、そして暗号資産業界へ今後どのような影響があり得るかを少し議論したいと思います。
まず「FATFとは」という内容です。これはFinancial Action Task Force、金融活動作業部会と呼ばれています。マネーロンダリング、テロ資金対策の国際基準を策定し、その履行状況について相互審査を行う多国間の枠組みです。加盟国は37カ国・地域と2地域機関です。その他、FATF型の地域体というものがあり、実質的にはFATF勧告といわれているものは世界190カ国以上の国、地域に適用されていて、非常に影響が大きいものです。
1989年に招集され、現在30年少し経ちます。もともとは薬物取引とその収益のマネーロンダリング対策を目的として招集されました。時限的な組織でしたが、その後活動期間の延長、改正などの作業を繰り返して今に至っています。40の勧告自体は、1990年に承認されていますが、今とはかなり内容は変わっています。特に大きな節目は2001年の米国での同時多発テロ事件です。テロ資金供与対策がマンデートに追加されてかなり大幅なアップデートがあり、新たな40の勧告が2012年に策定され、それに基づいて活動が続けられてきました。2019年までは時限付きでの活動が繰り返されてきて、2019年に無期限になり今に至っています。
FATF勧告という40の勧告があります。FATFの整理によれば、その勧告本体、解釈ノート、用語集、この三つがFATFスタンダードであるとされています。一方で、ガイダンスは、各国がFATF基準や今の三つの実施を支援するために作成される文書であって、FATF基準の遵守状況を評価するために必須のものではない、とされています。ですから、今回の改訂ガイダンスは、非常に重要な内容が含まれていますが、FATF基準あるいはFATFスタンダードそのものを構成するものではなく、各国による実施を支援するための文書という位置付けということです。
そもそもFATFはどのような組織なのかということですが、FATFは法人格を有しない形で、インフォーマルな形式を取っています。これはマネーロンダリングやテロ資金供与に迅速に対応するために、そのような形式を取っているもので、文書採択の手続きが略式的であって、全体会合においてコンセンサスで採択します。また、FATFの策定する文書は、法的な意味での拘束力は有しないとされています。ただ、FATF勧告は法的な意味での拘束力はないとされていますが、相互審査の枠組みによって、事実上は強い拘束力が存在するといえると思います。
FATFに対して、JCBAの意見書を含め、暗号資産の業界からプロセスが不透明ではないかとの意見や、民主的正統性に問題があるのではないかという点について指摘がなされることがあります。迅速に対応するためにインフォーマルな形式を取っている一方で、各国がFATF基準に沿った法律を作るように仕向ける非常に強い拘束力があり、そこのギャップに関して本当に民主的正統性があるのか、という指摘がなされています。
今回、FATFによるパブコメが実施されて、業界・民間に意見を聞いています。しかし、例えば国内では国がルールを決めるときは国会で国民の代表者が議論する、行政が政府令を作るときにはパブコメの手続きをするなど、ルールが固まっていますが、FATFに関してはそのようなしっかりしたルールはありません。どのようにパブコメ等の手続ががなされ、民間の意見も踏まえててFATFの文書を定めるかといった点がしっかり決まっていないという辺りが、不透明といわれる一つの理由になっているかと思います・・・
・・・
では、デプロイしたコード開発者が媒介行為をしているのかというと、そもそも契約が成立していないのであれば、媒介も成立し得ないということになりますので、「②:➀に掲げる行為の媒介、取次ぎ又は代理」についても当たらない可能性があります。「③:➀及び②に掲げる行為に関して、利用者の金銭の管理をすること。」と「④:他人のために暗号資産の管理をすること」はカストディをいいますが、通常DeFiの場合はノンカストディアルを使っていますので、そういった預託も生じていません。あくまでDEXということで、分散化されているという場合を想定していますが、そういった場合には、現状の法律を点検すると、暗号資産交換業に該当しないのではないか、とも考えられま
す。
ただ、DEXやディセントラライズといっていても名ばかりで、実質的には中央管理者が存在する場合もあり得ると思います。そういった場合には、確かに通常の自動化された取引を提供している主体と同じで、暗号資産交換業に該当すると判断される可能性はあると思われます。しかし、どのような場合が分散化されているDEXであって、どのような場合がそうではないのかの境目も非常に曖昧なところがあると思いますので、この辺りの判断は個別具体的にしていかなければなりません。ある程度は分散化をして運営している場合に、誰が交換業者に該当するのか、と決定するのはかなり難しい判断となるのではないかと個人的には思います。これはあくまで私見、私論ですので、もちろん異論はあり得ると思いますが、そもそも契約は成立しているのかというところで、このような議論も可能ではないかと考えました。
こうした検討を前提に、先ほどのガイダンスに戻ると、ガイダンスにおいても、中央管理者が存在する場合にはVASPに該当するとしていますが、現状の資金決済法の解釈としても、中央管理者がいるのであれば、当該管理者を中心とした契約が成立しているという評価もあり得ると思います。そうではなく、分散化されている場合には、そもそも中央管理者が存在しないことになるので、ガイダンスによってもVASPに誰が該当するのかは難しい判断があるというところです。結局、そういった個別具体的な判断で対応していく必要があると思います。
いずれにしても、今回の改訂ガイダンスが出たこと自体によって、日本の法律の解釈が大きく変わるというところではないであろうと理解しています。
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